バチカン(ローマ教皇庁)教理省は4日、昨年12月に発表した宣言「フィドゥチァ・スプリカンス」について、その意図を明確にする声明(英語)を発表した。宣言は、カトリック教会の司祭が同性カップルを祝福することを許可するもので、世界中のカトリック教会の保守派から反発を受けていた。
教皇、同性カップルの祝福を許可 ただし結婚に類似するものはNG 結婚の教理も堅持>>
教理省長官のビクトル・マヌエル・フェルナンデス枢機卿の署名入りで出された声明は、声明の意図について、「フィドゥチァ・スプリカンス」に対する理解を明確にするとともに、「その意味と目的をよりよく理解するために、その全文を十分かつ冷静に読むよう」促すものだとしている。
「フィドゥチァ・スプリカンス」は教理省が起草し、昨年12月18日に教皇フランシスコが承認し、発表された。
宣言は、司祭らに「通常とは異なる状況にあるカップルや同性カップルを、その地位を公式に認めたり、結婚に関する教会の永遠の教えをいかなる形においても変えたりすることなく、祝福する」ことを許可するとしていた。その一方で、「通常とは異なる状況にあるカップルの祝福のための儀式を準備したり、促進したりすべきではありません」ともしていた。
この宣言は、主に東欧とアフリカの司教らの反発を招いた。
カザフスタンの首都アスタナのトマシュ・ペタ大司教は、宣言を承認した教皇を公然と戒め、自身の大司教区内の教会では同性カップルのいかなる形の祝福も禁止するとした。
ケニアでは、ケニアカトリック司教協議会が声明(英語)を発表し、宣言は「キリスト教徒、神の民全般に不安と混乱さえも引き起こしている」とした。
一方、米国カトリック司教協議会は、宣言が「典礼的(秘跡的)祝福と、神の愛に満ちた恵みを人生に望む人に与えられる司牧的祝福とを区別している」点を強調。声明(英語)で次のように述べていた。
「結婚に関する教会の教えは変わっておらず、この宣言は、私たち一人一人が人生において神の癒やしの愛と慈悲を必要としているため、司牧的祝福を与えることを通じて人々に寄り添う努力をしていることを確認するものです」
フランスでは、大司教や司教ら9人が、それぞれが管轄する教区に向け、宣言に関する共同指針(フランス語)を発表。同性愛者個人を祝福することは許されるが、同性カップルを祝福することは許されないとした。
これらの動きに対し、フェルナンデス枢機卿は、世界中の司教らからの反発は「教理に関する抗議とは解釈することはできません。なぜなら、この宣言は結婚とセクシュアリティーについて明確かつ決定的であるからです」とし、次のように述べた。
「教理的に見て、この宣言から距離を置いたり、この宣言が異端的であるとか、教会の伝統に反しているとか、冒瀆(ぼうとく)的であると考えたりする余地はありません」
フェルナンデス枢機卿はさらに、同性カップルなどに対して認められるという「儀式化されていない祝福の形式」の「具体的な例」を示し、それは10秒から15秒程度であるべきだとした。そして、「道徳的に受け入れられないものを正当化するつもりはありません」と強調。これらの祝福は、結婚や特定の何かの「承認」ではなく、単に「神の助けを求める2人への司牧者の応答」であると強調した。
また、このような非典礼的な祝福は、「地域の状況や、各教区の司教が自身の教区をどのように認識しているかによって」適用にさらに時間を要する可能性があると説明。「すぐに適用するのに問題がない地域もあれば、その読み込みと解釈に時間がかかり、すぐには導入しないことが適当な地域もあるでしょう」とした。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、教皇の神学顧問も務めるフェルナンデス枢機卿は最近、ドイツのカトリック新聞「ディー・ターゲスポスト」に対し、この宣言は同性カップルに対し典礼的祝福を施したいと考えているドイツのリベラル派の司教らに対する「明確な回答」を意図したものだと話したという。
「これは、2、3の国の人々が望む答えではないのです。むしろ困難ではありますが、誰もが受け入れることができる司牧的回答なのです」