英国国教会で17日から、同性カップルの祝福を含む「愛と信仰の祈り」が礼拝で使用できるようになった。
英国国教会の主教会は10月、「愛と信仰の祈り」の使用を奨励することで合意。11月に開かれた総会でも、主教会が「愛と信仰の祈り」を奨励することなどを勧告する動議が可決されていた。主教会は総会の勧告を受け、12日にオンラインで開催した会議で、「愛と信仰の祈り」の奨励を正式に決定。これにより、聖餐式を伴う日曜礼拝や夕べの祈りなど、英国国教会で行われる定例の礼拝で、同性カップルを祝福する祈りが使用可能となった。
総会はこの他、同性カップルを祝福するための単独の礼拝を教会法の下で正式に承認することも勧告しており、主教会はこの日の会議でも継続して検討を行った。
12日には、祈りがどのように使われるべきかを定めた牧会指針と共に、「愛と信仰の祈り」の最終的な文言(英語)が公表された。その序文には、次のように書かれている。
「『愛と信仰の祈り』は、互いに愛し合い、その愛に感謝し、神の御前で信仰をもってその愛を示したいと願う同性カップルと共にあり、また、彼らのために祈る手段として提供されます」
「神の御前で2人の誓いを祝福するのは喜びの時です。この祈りの文言は、共に神に人生をささげる2人が信仰と愛と奉仕の中で成長できるように、神の祝福が2人の上にあるように願う祈りと感謝、希望を表すために提供されるのです」
さらに、同性カップルが「互いへの愛をいつも喜び、御父が御子イエス・キリストに示された聖なる希望の道に従うよう」、神が彼らを恵みで満たすことを願い求めている。
「愛と信仰の祈り」の導入を監修するグループの共同議長を務めたマーティン・スノー主教(レスター教区)とヘレン・アン・ハートレー主教(ニューカッスル教区)は、次のように述べた。
「『愛と信仰の祈り』は、誠実さと愛を誓い合う同性カップルと共にあるもので、また、彼らのために祈る手段です。この祈りは、神と信仰共同体の前で感謝し、喜びをもってその愛を示したいと望む人々にそれらを可能にすることを意図しています」
一方、「愛と信仰の祈り」については、保守派からは強い反対の声が上がっている。今回、その使用が正式に承認されたことで、英国国教会の未来に疑問を抱く人も多く、既に同教会を離脱した人も出ている。
主教の間でも反対の声が上がっており、フィリップ・ノース主教(ブラックバーン教区)、マーティン・ワーナー主教(チチェスター教区)、ジル・ダフ主教(ランカスター教区)ら11人の主教は、「愛と信仰の祈り」を奨励するという主教会の決定に公に反対している。
こうした動きに対し、主教会は、同性カップルの祝福を、自身の良心を理由に拒否する人のための司牧についても検討すると説明。「合意されたものが教会全体の統一を促進し、幅広い支持を得ることを確実にするため、(「愛と信仰の祈り」の)規定に関する幅広い協議プロセスを設ける予定」だとしている。
スノー主教は、次のように述べた。
「私たちは、英国国教会の全ての人が、私たちが何者であるかの核心に関わるこれらの重要な問題――人々の人生、彼らの愛、そして私たちが共有する信仰について――について合意しているわけではないことを知っています。これは主教会にも反映されており、最良の進め方について異なる見解が残っています」
「この祈りは司牧の備えとして提供されるものです。この祈りが恵みと理解をもって用いられることを祈ります。この祈りを分かち合うことは、教会全体の祝福となるでしょう」
これに対し保守派は、結婚を男女の生涯にわたる結び付きとする英国国教会の教理を損なうことなく、同性カップルを祝福する祈りを導入することができるのかについて、疑問を呈している。
保守派組織「英国国教会福音主義評議会」(CEEC)のメンバーであるアンドリュー・ゴダード牧師は、英国国教会の「かなりの割合」の人々が「愛と信仰の祈り」を望んでいないとし、その反対の強さは、祈りの「さらなる改訂」ではなく「リコール」のような結果になる可能性があると述べた。
英国以外では、「聖公会グローバルサウス・フェローシップ」(GSFA)が、「愛と信仰の祈り」の導入は英国国教会を「聖書の明確で規範的な教え」に違反させ、「アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)に連なる他の多くの聖公会との交わりを損なう」ことにつながると警告している。