かつては同性愛者のイスラム教徒だったものの、現在はキリスト教徒となり、教会の奉仕に励んでいるという米国人男性が、いかにしてイエス・キリストに出会い、人生が変えられたかについて語った。
自らの体験を明かしたのは、ドノバン・アーチーさん。世界最大の証しのアーカイブ作成を目指している伝道プロジェクト「デラフェの証し」の6月8日のエピソード(英語)に登場し、自らの生い立ちから、イエス・キリストとの出会いについてまで話した。
米中西部デトロイトで生まれたアーチーさんは、非宗教的な家庭で育った。一方、父親は自身がイスラム教徒であるという強い自覚があり、アーチーさんも自身はイスラム教徒だと自認して成長した。しかしそれと同時に、同性愛者としての生活を送り、人生の満足を見つけようともがく自身の姿があったという。
「神の御前に歩み入ろうと試みたり、神が私を受け入れ、愛してくれるようにしようと試みたりすることはできました。しかし、そこに何の価値も満足も見いだせませんでした。同性愛者としてイスラム教の教えを実践する中、神が何者であるかについて、深い感情や確信はありませんでした」
「私の心には何の変化もありませんでした。ただ、自分の(同性愛者としての)生活をし、神のためにパフォーマンスをする私があっただけでした。私はよく、以前飼っていた犬のことを思い出します。私の犬は、おやつをもらうためにパフォーマンスをしました(が、私もそのようでした)」
幼い頃から同性に引かれる性的指向があることを自覚しており、小学校や中学校では女っぽいという理由でいじめられた。しかし、大学に進学するまでにプロのダンサーになったアーチーさんは、雇われてバレエやモダンダンスを踊ることがあった。そして大学3年生の時に教会に招かれ、ダンスの公演に参加することになった。アーチーさんは当時のことを次のように語った。
「私は(教会の)みんなに、『私がクリスチャンになるだとか、祈るとか、皆さんが教会でするようなことは期待しないでくださいね』と言いました。なぜなら私は当時、自分をイスラム教徒だと自認していたからです。しかしまた同時に、当時の私は、自分のアイデンティティーやセクシュアリティーについて葛藤してもいました」
「それでも私は、彼らに説教や祈りや何かをしてほしかったわけではありません。ただ、そこに行って踊りたかっただけだったのです」
アーチーさんは、教会で自分の出番を待っているとき、牧師が語るメッセージを聞いたことでイエスに対する見方が変わった。
「メッセージのテーマは『門番の回復』でした。牧師は、いかに神が人々をご自身の元に呼び戻し、神の名を持つ人々の回復を始めているかについて話しました。神は、この世界で神の愛に応えてくれる人を積極的に探しているのです。神は私たちの心を追い、天の御国の門番となる人々を呼び寄せているのです。神はそのような人々を回復させ、暗がりから連れ出しておられます。神はこのような変わることのできる人生を用意してくださっているのです」
アーチーさんは、牧師のメッセージに「興味を持った」ものの、「まだ自分にはイエスを体験する準備ができていない」と思った。しかしその後、寮の部屋に戻ったアーチーさんは、そこで人生を変える夢を見ることになる。
「夢の中で私は眠っていたのですが、起きて自分の命のために戦うことになりました。大きな音が鳴り響きました。サイレンが鳴り響いていました。部屋は熱くなり、私の目は赤くなりました。赤しか見えないのです」
「私は、友人を呼ぼうとしたのを覚えています。母や父など、私にとって大切な人たち、その時助けてくれると思った人たち皆を呼ぼうとしたのを覚えています。当時、私の霊的な導き手であったイマム(イスラム教の指導者)に電話をかけようとしましたが、電話は手の中で溶けてしまいました」
「私は彼らの名前を呼びましたが、もはやイエスの名を呼ぶ他なくなったことを覚えています。そして、『イエス、イエス、イエス、イエス』と言うと、すぐにそこにあった砦(とりで)は崩れ落ちました」
そしてアーチーさんは、イエスが実在することを認識し、夢から覚めることになる。「神が『私はあなたを回復させる。砦は崩れた』と言うのをはっきりと聞いたのです」
「これは、教会の礼拝でのことではありません。人々が異言で話したり、あなたのために祈ったりしてくれているような、そのような高揚した場面でのことではないのです。そこにいたのは私一人だけで、夢の中で神と交わした経験だったのです」
「私は光を身にまとい、両手を上げて、『神よ、分かりました。私と共にしたいと考えていることが何であれ、今なさっていることが何であれ、そのようにします』と言いました」
アーチーさんは、夢で神の声を聞いたことは「自分の人生にとって画期的なことだった」と語った。
「自分のセクシュアリティーや、この世において自分は何者なのか、あるいは自分自身にとって本当の自分は何者なのかといった、それまで自分がしがみついていたアイデンティティーの砦は、もはや役立ちませんでした。役に立たないばかりでなく、むしろ、自分が神において何者なのかを本当に学び知ることを妨げる砦となっていたのです。その瞬間、分かったのです。『神よ、もしあなたが砦を取り除こうとしておられ、それが私のアイデンティティー(という砦)から始まるのであれば、他にどのような砦があって、私をそこから解放しようとしておられるかが想像できます』」
「(夢を見た後)寮の部屋の半分近くを片付けました。プライドフラッグ(性的少数者肯定運動の旗)やイスラム教の祈りのプレート、1日5回の祈りのときに使っていた敷物などがあったからです。それらを全て梱包して、キャンパスの外へ持っていき、ガソリンスタンドの裏のゴミ箱に捨てたことを覚えています」
アーチーさんは、夢を通した不思議な体験により人生の大きな転機を迎えたものの、その後も「神は本当に私のような人間を愛してくれるのだろうか」という疑問と闘ったという。
「世は『私は愛されている』と言います。だから、『私は愛されている』のだと思います。しかしそれでも、私の心の中にはどうしても、『神は私を嫌っている。神は本当に私が変わることを望んでおられる』という葛藤がありました」
しばらくこうした葛藤の期間を過ごした後、ある友人がアーチーさんを、キリストにあるアイデンティティーについての聖書の勉強会に招待してくれた。アーチーさんはそこで、ローマの信徒への手紙12章2節の「心を新たにして自分を変えていただき」という御言葉を黙想した。
アーチーさんは、この聖書の勉強会によって、イエスが自分を愛していること、またそれと同時に、イエスは自分が変わることを望んでいることを、より深く理解するようになったという。
「イエスは来られて、それまでのアイデンティティー(同性愛者やイスラム教徒であること)から私を贖(あがな)い、そして、私に違う道を示してくださいました。(以前は)ほとんど存在などしていない神(アラー)のために『パフォーマンス』をしていましたが、それは全て、自分自身でできることがベースとなっているものでした。しかし神は、神に向かう真の道として示されたイエスとの関係に私を入れられました。その神は、実際に私の心を求め、共に現実に何かをしようとなさるお方だったのです」