教皇フランシスコは24日、AP通信の単独インタビュー(英語)に応じ、同性愛は「罪」だが「犯罪」ではないとし、各国は同性愛行為を違法とすべきではないと述べた。
インタビューの中で教皇は、同性愛は「罪」だとしつつ、「罪と犯罪」を区別する重要性を強調。「同性愛であることは犯罪ではない」と述べた。
「私たちは皆、神の子です。神は私たちをありのままで愛しておられます。一人一人が自分の尊厳のために戦う必要があり、その強さのために神は愛してくださるのです」
教皇は、罪と犯罪の違いに言及し、「互いの慈愛を欠くこともまた罪です。それについてはどうでしょうか」と問いかけた。
教皇は、同性愛行為を犯罪としている国が世界には数十カ国あり、複数の国が死刑に価する犯罪に分類していることを指摘。そうした法律は「不公平」だとし、カトリック教会はそのような法律に反対しなければならないと話した。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のまとめ(英語)によると、アフリカ、アジア、東欧、カリブ海や太平洋の小さな島国を中心に、世界では67カ国が同性間の性的関係を違法としている。そのうち同性愛行為が死刑になる国には、ブルネイ、イラン、モーリタニア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、イエメンがある。
今回の発言は、教皇のこれまでの発言に続くもの。教皇はこれまで、結婚は一組の男女の結合であり、同性愛は罪であるとするカトリックの教義を変更することを断念する一方で、同性に魅力を感じる人々を歓迎する姿勢を呼びかけてきた。
2020年には、ドキュメンタリー映画の中で、同性カップルに婚姻に準じた法的権利を認める「シビルユニオン」への支持を歴代教皇で初めて表明。「同性愛者は家族の一部になる権利があります」と言い、「彼らは神の子どもであり、家族となる権利があります。誰もそのことで放り出されたり、惨めな思いをさせられたりしてはなりません」と述べた(関連記事:教皇フランシスコ、同性愛者の「シビルユニオン」支持を明言 歴代教皇初)。
一方で、この発言が反発を招いたことを受け、バチカン(教皇庁)国務省は、「教皇フランシスコは、特定の国の規制に関して述べたのであって、カトリック教会の教義についてではない。教会の教義を巡っては、(教皇は)長年にわたり幾度も再確認してきた」と説明した。
バチカン教理省は翌年、結婚に関するカトリック教会の教義を確認する声明(英語)を発表。声明は、「(カトリック)教会には同性間の結合に祝福を授ける権限があるか」という質問に対する回答として出された。
声明は、「婚外性交渉を伴う関係やパートナーシップは、たとえ安定した関係であっても、祝福を与えることは許されない」と指摘。それと同様に、たとえ同性間の結合に「肯定的な要素」があったとしても、「創造主の計画に沿わない結合の中に肯定的な要素が存在することであり、これらの関係を正当化し、教会の祝福の正当な対象とすることはできない」とした(関連記事:バチカン、同性婚の祝福を否定 教理省が見解 「創造主の計画に沿わない」)。
教皇は、昨年1月の一般謁見演説(英語)では、「子どもの問題を抱えている父母」、特に「子どもに異なる性的指向が見られる父母」に向けたメッセージを語った。その中では、同性に魅力を感じる子どもを持つ父母に対し、「子どもに寄り添うべきであり、非難という姿勢の中に隠れてはならない」と警鐘を鳴らした。
カトリック教会の公式な教義を記した「カトリック教会のカテキズム」(英語)は、同性愛行為について「本質的に乱れたもの」で「自然法則に反する」としている。また「いのちという贈物に至る性行為を閉ざすもの」であり、「真の愛情や性の相補性から生じるものではない」とし、「いかなる状況においても承認されることはない」としている。
カトリック教会は、同性に魅力を感じた経験を持つ人々に「貞操」を実践するよう呼びかけており、性的指向にかかわらず、洗礼を受けた者は皆がそうでなければならないとしている。
一方で、カテキズムには、同性愛者に対する非難を控えるというフランシスコのコメントと同様のレトリックが含まれており、同性に魅力を感じる人々を「尊敬と同情と感受性をもって受け入れられなければならない」と強調。「彼らに関する不当な差別のあらゆる兆候を避けるべきである」と忠告している。