バチカン(ローマ教皇庁)が同性婚に否定的な見解を示したことに反発し、欧州のカトリック司祭の一部が、同性カップルの結合(婚姻に類する関係)を引き続き祝福する意向を発表した。
同性婚の祝福を支持する立場を取り続けてきた「司祭イニシアチブ」(PI、拠点:オーストリア)は16日、バチカン教理省が発表した見解に従わない意向を表明する声明(英語)を発表した。声明は、「同性カップルの祝福禁止を望む教皇庁の見解に、ひどく愕然(がくぜん)としました」と述べている。
「これでは、私たちが教皇フランシスコへの服従に甘んじていた時代に逆戻りすることになります。多くの人と連帯し、私たちは今後、神の祝福を望むいかなるカップルも拒否しない意向です。愛し合う二人は、教会のミサの中で日々神から祝福されているのです」
PIは2006年に設立され、主にオーストリア在住のメンバー約350人で構成される。声明では、同性カップルは、異性カップルと同程度の深い愛情で結ばれることが可能だと述べている。
「愛で結ばれている同性カップルが教会で神の祝福を十分に受けられることは、昔から現実によって教えられているところです。責任を伴うこの行為(同性カップルの祝福)は、最先端の神学によって確立されています」
一方、バチカンは教理省長官ルイス・ラダリア枢機卿らの署名が入った声明で、「たとえ安定した関係やパートナーシップであったとしても、婚外性交渉を祝福できないのと同様、同性間の結合も祝福できない」と言明している(関連記事:バチカン、同性婚の祝福を否定 教理省が見解 「創造主の計画に沿わない」)。
「(同性間の)関係に肯定的な要素が存在するとしても、肯定的要素そのものは尊いものとされるべきであり、高く評価されるべきではあるが、創造主の計画に沿わない結合の中に肯定的な要素が存在することであり、これらの関係を正当化し、教会の祝福の正当な対象とすることはできない」
バチカンの見解の支持者の一人で、カトリック系の米フランシスカン大学スチューベンビル校で道徳神学の教鞭を執るケビン・ミラー教授は、バチカンの見解は従来のカトリック教会の教えと合致するとの考えを示した(関連記事:同性婚の祝福否定、バチカンの見解に賛否 米キリスト教指導者5人の反応)。
ミラー氏は電子メールで送信した声明の中で、「この教えは聖書と伝承にしっかりと基づいており、これ以外にはあり得ません」と述べている。
「肯定的な要素(例えば、友情やそれに伴う他者への心遣いなど)は同性同士の関係にも存在するかもしれません。しかし、同性同士の関係は、同性間の行為を含んでいる限り、全体としては『創造主の計画に沿わない』のです」
「神の計画と本質的に対立するものを祝福するなら、それは性質上、祝福を乱用することになるという意味で一種の矛盾です。禁止されているというよりも不可能なのです」
一方、米進歩主義団体「カトリック・フォー・チョイス」(CFC)のジェイミー・マンソン代表は、「いかなる形であれLGBTQコミュニティーを否定するのは深刻な残虐行為」と述べ、バチカンの見解を非難している。
マンソン氏は、「同性婚に反対するバチカンの不必要な攻撃は、万人の間に橋を架けるのではなく、人々を分離し、家庭を隔てる壁を設置する意図を反映しているように見えます」と指摘。「性器の補完が結婚の絶対要件だと主張することで、カトリック教会は神に愛された神の子たち全員のあらゆる人間関係の中に働く神の力に制限を加えているのです」と述べている。
米保守主義団体「カトリック連盟」のビル・ドノヒュー会長は、クリスチャンポストのインタビューに応じ、バチカンの見解はこの問題をめぐる教皇フランシスコの立場を明確に表していると語った。
教皇フランシスコは昨年、民間レベルでの同性カップルの結合を合法化するよう求めたと伝えられている。しかし、バチカン当局者は後に、教皇の発言でカトリック教会の教えが変更されたわけではないと説明している。
ドノヒュー氏は「カトリック教会が(未婚者の)同棲を祝福することは決してありません」とした上で、次のように述べた。
「これは同性愛者だけのことではありません。結婚せずに同棲する男女がいますが、教会はそれを認めていません。厳密に言うと、これは同性愛者に関する問題ではありません。ただし、彼らがそれ(同棲を認めること)を強く要求しているのは明らかです。しかし、それは(合法的な結婚)をしていないすべてのカップルに適用されるものです」