英国国教会は18日、同教会の主教らが、同性カップルを祝福することは認める一方、一組の男女間のものとする伝統的な結婚の定義は維持する提案を示す方針だと発表した。20日には、17ページにわたる提案の全貌を発表。その中には、LGBTQ(性的少数者)の人々に対する謝罪の言葉も盛り込んだ。
発表(英語)によると、主教らは「同性カップルのための感謝と献身、神の祝福を求める祈り」を提案するとともに、「同性カップルを惜しみなく、喜びをもって歓迎するよう、全ての信徒に促す」意向だという。
英国国教会はこの6年間、結婚やセクシュアリティーなどをテーマに取り組みを続け、20年にはそれまでの対話をまとめた資料「愛と信仰に生きる」(LLF)を発表。LLFを基に教会内で議論を進めてきていた。今回の提案はその一環で、来月ロンドンで行われる総会で議論される。
主教らによる提案の内容が決まったことを受け、英国国教会の主席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、次のように述べた。
「今日、私たちが行う提案が、ある人にとっては行き過ぎのように見え、他の人にとっては全く十分とは言えないように見えるのではないかという邪念は、私のうちには微塵もありません。むしろ私の願いは、合意内容が共通の利益を求める寛大な精神で受け入れられることです」
発表によると、この提案は「英国国教会の聖婚(結婚)の教義を変えることなく」、同性カップルに「最大限の牧会的配慮」を提供するもの。そのため、「一人の男性と一人の女性の間で生涯続くもの」という英国国教会の結婚についての正式な教義は変わらず、同性カップルが英国国教会所属の教会で結婚することはできない。
しかし、「市民婚(宗教施設以外で挙式を行う婚姻)やシビルパートナーシップ(婚姻相当の権利を認めること)の後、同性カップルが、献身の祈りや感謝の祈り、神の祝福の祈りを伴う礼拝を教会で執り行う」ことは許されることになる。
この提案には、「市民婚やシビルパートナーシップのような重要なステージを迎えた」同性カップルを、主教らが承認するために「自主的に」用いることのできるさまざまな祈りも含まれる。
18日の発表によると、「愛と信仰の祈り」と呼ばれるこれらの祈りは、英国国教会の「神学的多様性」を反映するものとなる。総会での議論を経た後、教区主教などで構成される「主教会」がこれらの祈りをさらに整え、使用を勧める。これらの祈りは聖職者が任意で使用するもので、さまざまな組み合わせで用いられる可能性がある。20日には、「愛と信仰の祈り」の草案(英語)が発表された。
18日の発表は、ヨハネの手紙第一4章16節「神は愛です。愛にとどまる人は、神の内にとどまり、神もその人の内にとどまってくださいます」を引用し、次のように述べている。
「今日、初めて概要が明かされた歴史的計画の下で、同性カップルは教会を訪れ、市民婚またはシビルパートナーシップに感謝し、神の祝福を受けることができるようになるのです」
18日の発表段階では、提案の詳細は明らかにされていなかったが、20日には17ページにわたるその全貌が発表された。主教らはこの提案(英語)の中で、英国国教会がLGBTQの人々を「拒絶し排除してきた」と認め、「私たちは、神があなたがたを愛するように、あなたがたを愛してこなかった。それは大きな誤りだった」と述べ、謝罪した。
この提案の策定を任された主教グループの座長を務めるロンドン主教サラ・マラリーは、18日の声明の中で、「あらゆる立場の多くの人にとって、(これまでのプロセスは)犠牲と痛みを伴うものでした」と語った。
「私たちは、自分たちが見聞きしたことに感動しています。また、これらの疑問点を巡って、主教や多くの教会の中に見解の相違が今も見られる中、非常に明確に伝わってきたことは、そういった違いを乗り越え、キリストにあって歩みを共にし続けたいという強い願いでした」
英国国教会の次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルは、この提案は、英国国教会の中でLGBTQを自認する人々に向けられた「拒絶や排除、敵意」の実例から得られたものだと述べた。
「個人として、また同僚の主教らを代表して、私は、神の似姿に創造された一人一人を誰よりも尊ぶべき英国国教会が(LGBTQの)人々や彼らが愛する人々に対してこれまで取ってきた姿勢に、深い悲しみと嘆きを表明したいと思います」
「私たちは深く謝罪するとともに恥じ入っており、この機会に私たちの信仰が教えている悔い改めの精神をもってやり直したいと思っています」
主教らによるこの提案は、2月6日から9日にかけてロンドンで開催される総会に提出され、8日に議論が行われる見通し。