英国国教会のトップであるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーはこのほど、自身が現在の立場にある限り、同性婚に対する自身の見解を述べることは控える意向を示した。
カンタベリー大主教は、英国国教会の主席聖職者であるとともに、世界各国に広がる各聖公会で構成される「アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)」の最高指導者の立場にある。
英タイムズ紙(英語)によると、ウェルビー大主教は、自身の役割はこの問題で何十年間も深く分裂している英国国教会の「一致の要(かなめ)」になることだと述べた。
「私の在任中に(同性婚に対する自身の見解を)言えるようになるかどうかは定かではありません。自分自身の思いを承知しているからには、私は自分自身の見解を述べることができます。また、その見解は変わることがありません」
「しかし、大主教の役割は、一致の要となることです。それは単に便利であるとか、実用的であるとかということではありません。キリスト教の考え方では、それは教会の指導者に対する神の呼びかけの一部なのです。それ故、私は神の前に、今がそうすべき時だと確信しなければなりません。政治的な目的だけでそうするわけではないからです」
英国国教会の主教らは、来年2月に開催される次回総会で、同性婚などの問題に関して見解を示すことになっている。これに向け、同教会の全主教が関わる「主教団」(College of Bishops)は、11月から来年1月までの間、各回3日間にわたる会合を計3回開催することになっている。
11月に第1回の会合が開催され、第2回の会合は12月12~14日に開催されたばかり。同紙によるウェルビー大主教のインタビューは、第2回の会合開催に合わせて公開された。
発表(英語)によると、第2回の会合は第1回と同じ形式で行われ、主教らはグループセッションと全体セッションでそれぞれの見解を共有し、同性婚などの問題に教会がどのようにアプローチすべきかを議論した。第3回の会合は、来年1月中旬に開催される。
英国国教会は2020年11月、結婚やアイデンティティー、セクシュアリティー、人間関係をテーマに、それまで1年にわたって行ってきた対話をまとめた資料「愛と信仰に生きる」(LLF)を発表した。その後、LLFを基に教会内で議論を進め、今年9月にはLLFに対する教会内の反応をまとめた報告書が発表された。
この報告書では、主教らが「大胆かつ勇敢で、明確かつ正直な」決断を下し、即座に行動を起こすことが強く求められていることが示された。また、同性婚の容認が広く支持されていることも明らかになった。
オックスフォード主教スティーブン・クロフトは、この数カ月の間に同性婚を支持することを公にした数人の主教の一人である。
一方、保守派は英国国教会に対し、結婚は一人の男性と一人の女性の間のものとする歴史的な立場を維持するよう求めている。
エジプトのムーニア・アニス名誉大主教は、英国国教会が同性婚を受け入れる方向に進めば、「世界中の何百万人もの忠実な聖公会の信徒が痛みと苦痛を感じるだろう」とし、「ウェルビー大主教が引き続き聖公会の指導者でいられるかどうかという重大な問題が問われることになるだろう」と述べている。