同性婚に反対するオーストラリア聖公会内の保守派が18日、新たに「南十字教区」を設立した。これを受け、オーストラリア聖公会のジェフリー・スミス首座主教は同日、声明(英語)を発表。「オーストラリア聖公会の幾人かのメンバーによって設立され、オーストラリア聖公会の教区の幾つかの特徴を反映した構造になっていますが、オーストラリア聖公会とは正式にも非公式にも関係はありません」と表明。同教区を「事実上の新たな教団」などと呼び、分裂が避けられない状況になっている。米宗教専門のRNS(英語)が伝えた。
南十字教区の新主教に任命されたのは、前シドニー大主教のグレン・デイビス主教。デイビス主教は英ガーディアン紙(英語)に、「さまざまな意味で悲しい日です」とコメント。「指導者たちが悔い改めて、聖書の教えに立ち返るなら、南十字教区は必要なかったことでしょう。これを閉鎖して出直せたことでしょう」と語った。
RNS通信によると、LGBTQ(性的少数者)や同性婚を巡って聖公会がこのような形で分裂しているのは、ニュージーランド、カナダ、ブラジル、米国で、オーストラリアはこれに続くもの。
南十字教区はホームページのQ&Aのページ(英語)で、「南十字教区はオーストラリア聖公会の一部ですか」という質問に対し、「いいえ。オーストラリア聖公会は、オーストラリア全土にある23の地理的に定義された教区で構成されています。南十字教区は、独立かつ平行した聖公会の教区です」と答えている。
RNS通信によると、オーストラリア聖公会では20年、教団内の最高司法機関である「上訴法廷」が、同性カップルの結婚を司祭が祝福することを認める判断を下している。
一方、今年5月に開かれた総会では、同性婚の祝福を認める議案は否決された。しかし、賛成票を投じた人は約40パーセントに上った。また主教会はこの総会で、結婚を男女間のみのものとする伝統的な価値観を拒否する声明(英語)を発表した。
南十字教区の設立を後押しした教団内の保守派グループ「ガフコン・オーストラリア」のリチャード・コンディ議長は声明(英語)で、「私たちにとって、問題は聖書の権威です」とし、次のように述べている。
「最近の総会での決定、同性婚の祝福に道を開く20年の上訴法廷の見解、そして『忠実な奉仕』(オーストラリア聖公会の聖職者と教会奉仕者が守るべき行動基準)の変更による行動基準の引き下げは、その例です。南十字教区は、現在の教区を離れる必要があると感じている人々に、聖公会における居場所を提供することでしょう」
一方、スミス首座主教は、5月の総会ではまだ伝統的な結婚が支持され、同性婚の祝福が認められなかったことを考えると、南十字教区を設立した人々の行動は「不可解」だと述べている。
しかし、ガフコン・オーストラリアは、「先の総会では、大多数の主教が結婚と性倫理に関する聖書の古来の教えを支持することができませんでした。オーストラリアの多くの聖公会信者は、彼らの失敗と、自分たちの教区で指導者の性的倫理の基準を引き下げようとする動きに心を痛めています」と述べ、主教会が総会で出した声明などを問題視した。