牧師家庭で育ち、日本と米国の神学校で学んだ著者が、現代社会の分断と孤独、経済格差の拡大、現代人の不安や生きがいの喪失などを総括し、一つの道標を提示する野心的な作品。既存の宗教が形骸化し、人々を失望させてきた歴史を踏まえた上で、津波の被害を後世に伝える「津波石碑」的な役割を担う宗教の本質に迫る。
著者は、韓国、米国への留学経験があり、現在はオランダに居住しながら執筆活動をし、本紙にもコラムを掲載している山崎純二氏。広範囲な知見を生かしつつ、難解に思われがちな宗教的・哲学的なテーマも読みやすい平易な言葉で解説する。「日本で牧師の子どもとして育った私が長年考えてきたことを、聖書の世界には縁遠いとされる一般の日本人に伝えたい」との思いがある。
本書では、歴史、科学、経済、哲学といった分野を横断しながら、根無し草的な現代日本と諸外国との有機的なつながりを再考する。啓蒙思想の発展に伴う分断や格差、不安と孤独の広がりに警鐘を鳴らし、これまでの宗教の功罪や歴史的経緯などに言及しつつ、宗教の本質を再定義していく。
各章のタイトルは、以下の通り。全271ページ。紙版は1480円(税込み)、キンドル版は980円(税込み)。アマゾン(紙版、キンドル版)で購入できる。
序章 自国起源説と世界文化との有機的な繋がり
2章 加速する不安と孤独の病理
3章 深化する社会の分断と葛藤
4章 世界と日本の有機的な繋がり
5章 宗教の功罪
6章 神道とユダヤキリスト教―予想外の繋がり―
7章 大乗仏教とユダヤキリスト教の交錯
8章 科学と宗教―永遠の対話―
9章 経済の問題か
10章 戦争の時代と宗教
11章 論壇と哲学―超越者VS人間理性―
12章 本当の問題―迷いも悟りもせぬフィリステル―
13章 再び天上の神様と繋がる日本―本来の宗教性への回帰―
終章 Gゼロ時代の津波石碑
■ 山崎純二著『Gゼロ時代の津波石碑―再び天上の神様と繋がる日本―』(2024年3月)