米大衆伝道者のフランクリン・グラハム氏は15日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」の奇襲攻撃で荒廃したイスラエル南部の複数のキブツ(生活共同体)を訪問したほか、同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相とも面会し、共に祈る時を持った。
米福音派支援団体「サマリタンズ・パース」と「ビリー・グラハム伝道協会」(BEGA)の総裁を務めるグラハム氏は16日、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)に寄せた声明で、ネタニヤフ氏と面会できたことは光栄だとし、同氏には祈りが必要だと付け加えた。
「ハマスの攻撃で約1200人が殺害され、240人以上の男女と子どもが人質に取られ、多くの負傷者が出ており、彼は建国以来、最もつらい時に直面しています」
「夫を人質に取られた女性と話しましたが、その恐怖と心の痛みは計り知れません。人質とその家族のために祈り、ネタニヤフ首相のために祈り、エルサレムの平和のために祈ります」
サマリタンズ・パースは先月、ハマスがイスラエル南部を奇襲攻撃した後、同国に災害救援チームを派遣した。また、パレスチナ人に食料と医薬品を提供する教会にも支援を行っており、イスラエルとガザ地区の50以上の教会と協力している。
ハマスが奇襲攻撃で多くの救急車を破壊したため、イスラエルの救急隊「マゲン・ダビド・アドム」(MDA)には21台の救急車を提供した。そのうち7台は、医療従事者と患者を保護するために装甲が施された救急車だった。
その他、戦闘用止血帯、胸部チューブキット、縫合キット、挿管キットなどのさまざまな医療用具が入った救急バッグをMDAに提供した。報道によると、これらの救急バッグはロケット攻撃のリスクが今後高くなると見られる地域に配備されているという。
「これまでサマリタンズ・パースは、イスラエルの国内避難民の家族に、衛生キット、約6千枚の食料引換券、300個の食料箱、3800食の温かい食事を提供してきました。これらの物資に加え、われわれは除細動器を含む医療機器を捜索救助隊に提供してきました」
さらに、サマリタンズ・パースは、ガザ地区とイスラエルに救急野戦病院を設立することをも提案しているという。
グラハム氏は15日、自身のX(旧ツイッター)に、ハマスに襲撃された複数のキブツを訪問した際の写真を投稿した。
あるキブツでは約130人が殺害され、26人が人質に取られたという。現在そのキブツには住人はおらず、イスラエル国防軍だけがいるが、グラハム氏は訪問時、自宅から所持品を取るために襲撃後初めて戻ってきた若い女性に会ったという。
その女性と幼い子ども2人は自宅の中に隠れていたため一命を取り留めたが、医師である夫は負傷者の手当てのために、勤めていた近くの診療所へと駆け込んだ。グラハム氏は次のように続けた。
「彼が命を救うために働いている間に、テロリストは診療所に突入し、彼とそこにいたほぼ全員が殺されました。生きて逃げられたのは、1人か2人だけでした」
「彼女は私に、彼が生涯の恋人だと言いました。嘆き、悲しみ、恐怖、トラウマについて、いまだ語られていない話は数え切れないほどあります。そしてそこには、大きな必要があるのです」