日本キリスト教協議会(NCC)の金性済(キム・ソンジェ)総幹事は16日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」による奇襲攻撃の報復として、イスラエル軍が同地区を空爆し地上部隊を侵攻させて、多くの市民が犠牲になっていることを受け、岸田文雄首相に対し、中東における日本の中立的な立場を生かし、より積極的な外交努力をするよう求める要望書を提出した。
金氏は初めに、多くの市民や外国人を含め約1200人(イスラエル政府は当初、約1400人と発表していたが、その後訂正)を殺害し、約240人を人質として拉致したハマスの奇襲攻撃について、「この暴挙は決して許されるものではなく、世界の厳しい非難と抗議が向けられることは当然」とした。
その一方で、ハマス掃討を目指してイスラエル軍が現在行っている攻撃により、ガザ地区ではこれまでに1万1千人以上が死亡しており、その半数近くが女性や子どもであることを指摘。こうした事態は、イスラエルの自衛権の行使という主張を完全に破綻させるとし、「ハマスを全滅させるためならどれほどのガザ市民の犠牲もいとわないという事態」になっていると批判した。
また、ガザ地区の人道的休戦を求める国連総会決議に言及。国連総会は10月27日に開いた緊急特別会合で、121カ国が賛成して決議を採択したが、日本や英国、ドイツなど44カ国は棄権した。金氏は日本の棄権について、「休戦ないし、停戦を求める日本の内外の人々にどれほど大きな失望を与えたことでしょうか」と批判。棄権の理由に関する上川陽子外相と岸田氏の説明については、「日本自身の主体的な判断が見受けられず、憲法9条を持つ国家としての理念と矜持(きょうじ)さえ感じられない」とした。
その上で、中東に対し複雑な歴史的背景を抱える欧米諸国に比べ、日本はより中立的な立場にあると指摘。そうした立場を生かすことで、これ以上ガザ地区の市民の命が奪われないよう、またハマスに捕らわれている人質が解放されるよう、「今こそ憲法9条の国にふさわしく積極的に前に出て外交の努力に尽力されますことを、心より要望する」とした。