日本キリスト教協議会(NCC)は12日、「パレスチナとイスラエルの平和を願う声明文」を発表した。声明は、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が7日、イスラエルに対して大規模攻撃を加え、多くの人質を取ったことを「暴挙」と批判し、「世界の人々と共に抗議」すると表明した。
一方、徹底抗戦を宣言し、ガザ地区に対し大量の軍事投入をする方針を示したイスラエルの対応については、「事態をさらに絶望的な方向に導く」として、「憂慮と疑問」を禁じ得ないとする考えを示した。
また、イスラエル側に立つと表明した米国のジョー・バイデン大統領の発言については、「米国大統領が今なすべき発言は、イスラエル側につくことの公言ではなく、いかに戦闘の終息に向けた外交的対話の場をつくるかについて方針を示し、世界に呼びかけることであった」とした。
声明は、イスラエル人が離散と迫害による苦難の歴史を経て、聖書が「約束の地」とするカナン(パレスチナ)に国家を形成しようとするシオニズム運動によって、イスラエルを建国した経緯に言及。しかしそれが、その地に住んでいたパレスチナ人を抑圧し排斥する歴史の始まりにもなってしまったとし、「パレスチナ人は今もなお、植民地支配を受けるような政治経済的な制約に縛られる過酷な現実を強いられている」と述べた。
その上で、イスラエル人、パレスチナ人は共に、「歴史の中でどちらも寄留者としての苦難の道を歩んできた民」だと強調。双方が辿り着くべき平和への道は、「あなたは寄留者を虐げてはならない。あなたたちは寄留者の気持ちを知っている。あなたたちは、エジプトの国で寄留者であったからである」(出エジプト23:9)と語る聖書の道に立ち返る以外にはないと訴えた。
また、世界は「この2つの民の苦難に歴史的に測り知れない責任を負う」とし、「政治的利害を超えて、和解と平和への道につながる外交的対話の場を設けるために、国連の仲介を通して全力を尽くすべき」と訴えた。
さらに、「キリスト者は、そのためにユダヤ教やイスラム教をはじめ、諸宗教の間でこの和解と平和の道の実現のために祈り、また対話を続けることを惜しんではならない」とし、「パレスチナとイスラエルの平和を切に祈り続けましょう」と呼びかけた。
声明は、NCCの吉高叶(かのう)議長と金性済(キム・ソンジェ)総幹事の連名で出された。