パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が7日、イスラエルに大規模攻撃を行い、これに対しイスラエルが報復攻撃を行ったことで、双方に民間人を含む多数の犠牲者が出ていることを受け、世界福音同盟(WEA)は9日、暴力のさらなる拡大に懸念を示すとともに、暴力の緩和と公正で永続的な平和に向けたあらゆる努力を行うよう呼びかける声明(英語)を発表した。
NHKなどの報道によると、ハマスによる一連の攻撃により、イスラエル側は10日までに、少なくとも900人が死亡、約2700人が負傷し、100人以上が人質になっている。ガザ地区側もイスラエルの報復攻撃により、770人が死亡、約4000人が負傷した。双方の死者は1600人を超え、負傷者は6700人を超えている。
イスラエルにいた外国人にも犠牲者が多数出ており、NHKや英公共放送BBC(日本語版)の報道によると、これまでにタイ人12人、米国人11人、ネパール人10人、フランス人2人などの死亡が、各国政府により確認されている。イスラエルではタイ人約3万人が農業に従事しており、タイ人はこの他11人が人質になっている。また、フランス人11人、フィリピン人7人、ブラジル人3人が行方不明になっており、英国人10人以上が死亡または行方不明になっているという。
WEAは声明で、これらのハマスの攻撃に「深く心を痛めている」と表明。その上で、「この侵略行為により、イスラエルとパレスチナでは暴力がエスカレートし、罪のない市民の命が失われている。われわれは全ての犠牲者を悼み、愛する人を喪った家族の慰めを祈る。われわれは、暴力がさらに拡大することを懸念している。それ故、われわれは暴力を緩和し、公正で永続的な平和に向けたあらゆる努力を促す」と述べている。
一方、一連の攻撃を受け、世界各国でイスラエル支持、パレスチナ支持双方のデモが行われていることについて、「われわれは、世界中の多くの国々で、民間人の殺害を喜ぶかのようなデモを目の当たりにし、困惑している」と表明。「WEAは、宗教や人種に基づくものも含め、いかなる殺害も喜ぶことを非難する」としている。
また、イスラエル・パレスチナ地域は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの宗教にとって、非常に重要な場所であることに言及。各宗教が神聖と見なす場所に対する冒瀆(ぼうとく)的行為が、紛争を繰り返しエスカレートさせる一因になってきたとした。
その上で、「われわれは世界中の信仰者に対し、平和と理解のために祈るよう呼びかけるとともに、公正に基づく平和は、平和を促進する方法について考え、話すことと同様に、行動にかかっていることを強調する」と述べ、「われわれは、イスラエルとパレスチナの人々の安全と幸福のために、そして聖地における公正で永続的な平和のために祈る」とした。