日本聖公会は19日、8月15日の終戦記念日に向けた「8・15平和メッセージ」を管区事務所のブログで発表した。メッセージは、武藤謙一首座主教と正義と平和委員会の上原榮正委員長(沖縄教区主教)による連名で出された。
メッセージは初め、今年で戦後78年となる日本について、戦争未経験者が大多数を占める社会になったことに言及。戦争に対する反省から不戦を誓い、天皇制国家から民主主義国家に変わったことで、主権在民や自由、平和を掲げて歩んできた戦後の日本の姿に触れた。
その一方で、「最近の日本の動きは憲法が定め、国民が求めて来た平和とは違った方向に向かいつつあります」と指摘。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本を含めた多くの国々が防衛費や軍事費を増額し、外交や対話による平和ではなく、軍事力による安全保障を求めようとしていると述べた。
また、新たな自衛隊基地建設やミサイル配備がなされている沖縄の現状にも触れ、「武力の増強は戦争への緊張を高め、不安を搔(か)き立て、更に危険な状況を生み出しています」と訴えた。
その上で、神の御心は「人々が互いに赦(ゆる)し合い、愛し合い、世界を神の国とすることです」と指摘。さらに、神の宣教は「弱く小さく貧しくされた人々が大切にされ、生きることへの喜びを回復することです」と続け、神の義は「人間の罪を赦し、命へと導きます」とした。
これに対し、戦争は「日常生活と物と自然環境を破壊し、喜びと財産を奪い、命を殺します」とし、戦争から生まれるものは、悲しみと憎悪であり、戦争には平和も正義もないとした。
平和については、「一人一人の命と自由と人権が尊ばれ、大切にされるところから始まります」「人と人が互いに知り合い、語り合い、日々に深めていく絆によって築かれます」「人と人、社会と社会、国と国とが絶え間ない対話を続ける努力の上に構築されます」とし、個人から国家のレベルに至るまで、互いを尊重し対話を行うことの重要性を語った。
最後には、イエス・キリストが十字架と復活により、「神との和解」「新しい命への希望」を人類に与えてくれたと強調。「命と平和への道こそ、私たちが歩むべき道です」とし、これまで日本が平和の中を歩んでこられたことに感謝するとともに、平和の尊さを確認し、平和を守り、平和をつくる努力を続けていこうと呼びかけた。