聖路加(せいるか)国際病院の元チャプレンによる性暴力事件で、病院と関連のある日本聖公会は23日、元チャプレンの不法行為を認定する判決が出たことを受け、被害を受けた元患者の女性に対し正式に謝罪した。
謝罪のメッセージは、日本聖公会のトップである武藤謙一首座主教と東京教区の高橋宏幸主教による2人の名義で出された。「原告(女性)の声と痛みに十分に寄り添うことができずにきたことを謝罪いたします」とし、係争中であることや組織的な限界などを理由に、十分な対応ができていなかったことを認めた。
女性を「支援する会」がこの日開いた判決報告集会には、日本聖公会管区事務所総主事の矢萩新一司祭がオンラインで参加。10月末に女性の代理人弁護士を通じて対応を求められ、その後女性と2度にわたり面談したことを説明した。
その上で、具体的な対応はまだ検討中だが、誠実に向き合っていく意志を示すものだとして、主教2人によるメッセージを読み上げた。
一方、元チャプレンが関係する日本基督教団神奈川教区はこのほど、女性からハラスメントの申し立てを受理。今月6日に開かれた教区の常置委員会で、今後、女性と元チャプレン双方に対する聞き取りを始めることが報告・承認されたことで、これから本格的な調査に入る。
神奈川教区総会議長の古谷正仁(まさよし)牧師はこの日、厚生労働省で開かれた記者会見に出席。「今回の判決で(元チャプレンの)不法行為が認められました。裁判所の公正で慎重な、また、さまざまな事柄を考慮した上での結論だと思うので、非常に重く受け止めなければならないと思っている」と語った。
また、日本基督教団がセクハラ防止に関する規則で、「教会としてふさわしい環境を形成する」とうたっていることを挙げ、「ただうたっているだけではなく、真剣に取り組まなければならない。私たちもその働きに加わりたい」と話した。
日本聖公会が被害者の女性に送ったメッセージは以下の通り。
このたび、日本聖公会の関連する聖路加国際病院と元チャプレンに対して起こされた民事訴訟について、損害賠償請求の一部を認める判断がなされましたが、日本聖公会および日本聖公会東京教区として、これに至るまで原告の声と痛みに十分に寄り添うことができずにきたことを謝罪いたします。
私どもはこれまで、原告からの声に対して、係争中であることや組織的な限界などを理由に調査・判断することが難しいとお伝えしてまいりました。
今後は、痛みを訴える方の声を真摯(しんし)に受けとめ、教会のみならず関連施設においても誰もが安全に過ごせる場所となるよう、法人・組織の枠を超えて取り組みを進めてまいる所存です。ことに病院をはじめ関連諸施設チャプレンの重要性を改めて認識し、意識改革と再発防止に努めてまいります。
2022年12月23日
日本聖公会 首座主教 主教 武藤謙一
日本聖公会 東京教区主教 主教 高橋宏幸