中国政府による迫害から逃れるため、信徒60人余りと共に4年前に中国を脱出した牧師が12日、米連邦議会議事堂前で記者会見を開いた。牧師は、米国に導き入れ自由を与えてくれた神に感謝する一方、多くの宗教者が依然として中国政府の弾圧に直面していると警告した。
会見を開いたのは、中国南部・深圳(シンセン)にあった「深圳改革宗聖道教会」を牧会していた潘永光(パン・ヨングアン)牧師。潘牧師は、これまで支援を受けてきた米キリスト教団体「チャイナエイド(対華援助協会)」の傅希秋(ボブ・フー)会長と共に、この日に開かれた宗教間円卓会議に出席するため首都ワシントンを訪問。会見は、会議の前に行われた。
深圳改革宗聖道教会は、いわゆる「家の教会」と呼ばれる中国政府非公認の教会で、中国国内では違法と見なされる存在だった。そのため、同教会の信徒らは、中国の警察から脅迫されたり尋問されたりする迫害に直面。2019年に韓国南部の済州(チェジュ)島へ逃れた。
しかし、何度申請しても難民とは認められなかったことから、韓国での亡命を諦めタイへ。タイの首都バンコクにある国連難民高等弁務官事務所を通じて難民認定を試みた。だが、それでも難民とは認められず、さらにオーバーステイ(超過滞在)を理由に収容施設に収容されることになってしまった。
そうした状況を受け、傅氏や米政府高官、関係機関が潘牧師らの解放を求めて交渉。その結果、米国への渡航が認められ、今年4月には潘牧師を含む59人がテキサス州ダラスに到着した。チャイナエイド(英語)によると、妊娠中の女性とその家族だけがタイに残っていたが、女性は4月中に無事子どもを出産。5月には女性の家族5人もダラスに到着し、全員が米国へ逃れることができたという。
チャイナエイド(英語)によると、潘牧師を含む64人は現在、同州テイラーに居住している。
64人のうちの約半数は未成年者で、宗教的な迫害を理由にこれだけの人が集団移住するのは現代では珍しい。そのため、深圳改革宗聖道教会は、英国国教会の迫害を逃れてメイフラワー号で新天地・北米大陸を目指した17世紀のピューリタン(清教徒)になぞらえ、「メイフラワー教会」と呼ばれるなどして注目を集めた。
潘牧師は会見で、自分たちを米国に導いてくれた神の「力」に感謝を表明。その一方で、潘牧師の友人で、現在収監中の秋雨聖約教会の王怡(ワン・イー)牧師を含め、中国では多くの宗教者が依然として抑圧されていると指摘した。
潘牧師はまた、自分たち解放のために尽力し、会見に同席したクリス・スミス下院議員(共和党)とナサニエル・モラン下院議員(同)、また、チャイナエイドと同じく潘牧師らを支援してきた米キリスト教団体「フリーダム・シーカーズ・インターナショナル」の創設者で最高責任者(CEO)のディアナ・ブラウン氏にも感謝を示した。
ブラウン氏は、潘牧師らがタイで拘束された際、ちょうどタイに滞在しており、中国に強制送還される危険性があった信徒らに寄り添いながら支援を行った。
ブラウン氏は、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に、「神は石(のような些細な存在)さえ用いることができるのです」と言い、「神に用いられるために私がそこにいたことは、本当に喜ばしいことでした。それは私にとって光栄なことでした。私たちの多くが何かをすることができるということを、米国人は知るべきです。それが重要だと思います」と語った。
潘牧師は、中国の迫害者に対し米政府が「圧力」を加えるべきだとする考えを述べた。また、中国で迫害されているキリスト教徒を、米国内のさまざまな教派がさまざまな方法で助けることができ、これまでも助けてきたと述べ、その例として聖書の提供やメディアへの働きかけを挙げた。
傅氏は、中国政府が「信仰に対する戦争を始めた」と警告。教会に献金箱を置いたという理由だけで牧師たちが罰金刑に直面したり、ウイグル族のイスラム教徒が強制収容所に収容されたりしていることなど、中国政府による迫害の例を強調した。
傅氏はまた、中国政府がいかにして人々の信仰を「完全に」政府に「服従」させているかを説明。「信教の自由は自由の基礎だ」と強調した。
会見の後、潘牧師と傅氏は米連邦議会議事堂内で行われた中国の信教の自由の抑圧に関する宗教間円卓会議に出席した。会議は、今年初めに米下院に新設された「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」のマイク・ギャラガー委員長(共和党)が司会を務め、キリスト教やユダヤ教、イスラム教の代表者らが出席した。