アルメニアのある村の娘アレフは、無神論者の家庭に育った。父親は、家で子どもたちが神の名を口にすることさえ許さなかった。
学生時代アレフは、あるクラスメイトの男の子と親しくなり、将来を約束する仲になった。彼の進路は兵士になることが決まり、学校を卒業すると、軍に入隊するために村を出ていった。
やがてアルメニアとアゼルバイジャンとの間で紛争(2020年のナゴルノ・カラバフ紛争)が起きると、新兵の彼は戦場で戦死して、帰らぬ人となってしまった。この知らせに大きなショックを受けたアレフは、立ち直れなくなった。「彼の死を聞いたとき、生きていたくなくなりました。どこにも生きる望みがなく、生ける屍のようになってしまったのです」
そんな時、アレフの姉は村の聖書研究会に参加し始めた。ところがある日、事件は起きた。アレフは自分の人生を終えようと大量の薬を飲もうとしたのだ。
「私は薬を一瓶丸ごと手に持って、全部飲み込もうとしていました。まさにその時、姉が私を見つけて私の手を強くたたいたので、薬が部屋中に散らばりました。姉は私を強く抱きしめて、泣きながら祈り始めました。その時、彼女は絶えずイエスの御名を口にしていました。私も姉の腕の中で泣きながら眠ってしまったのです。目を覚ますと、私たちは神と神の愛、救いについて長い時間、話し合いました」
今アレフは、姉や他の信者たちと一緒に、神の御言葉を学び、礼拝し、祈るために集まるようになった。そして大切な人を失った心の傷は、日々癒やされつつある。生きる気力を回復した彼女は言う。「私は大学に通い、子どもたちのために働く準備をしています。子どもたちに神の希望を伝えたいからです」
数ある悲しみの中でも、愛する人との死別の悲しみほど大きな悲しみはない。しかし、誰にも癒やすことのできない心の傷を、われらの悲しみを知ってくださる主イエスは、私たちに同情し、癒やしてくださるのだ。癒やし主なる主をたたえよう。
アルメニアの兄姉たちの伝道を通して、福音が大切な者を失い悲しみに沈む人々にも届き、心の癒やしをもたらすことができるように。そしてこの地の宣教のために祈っていただきたい。
■ アルメニアの宗教人口
正教会 84・6%
プロテスタント 2・3%
カトリック 7・3%
無神論 3・7%
イスラム 1・8%