西アフリカのナイジェリアのNGOはこのほど、5月の1カ月間だけで、少なくとも700人のキリスト教徒が殺害されたとする報告書を発表した。最も犠牲者が多かった州では、3日間に300人余りのキリスト教徒が殺害されたという。
同国南部アナンブラ州に拠点を置くNGO「インターソサエティー」が発表した報告書(英語)によると、5月に最も犠牲者が多かったのは中東部のプラトー州で、5月15日から17日までの3日間だけで、300人以上のキリスト教徒が殺害された。次に犠牲者が多かったのは、同じく中東部のベヌエ州で、110人以上が殺害された。
さらに、4月12日から6月12日までの2カ月間には、少なくとも1100人のキリスト教徒が殺害されたという。これは平均すると、1日に17人のキリスト教徒が殺害されたことになる。インターソサエティーは、「この期間は、ナイジェリアにおける反キリスト教攻撃の中でも最も残虐なものの一つである」としている。
インターソサエティーは、キリスト教徒の犯罪学者であるエメカ・ウメアグバラシ氏が設立。ナジェリア国内で殺害されたキリスト教徒の数などを調査しており、定期的に集計結果を発表している。2023年は、これまでの160日間に、少なくとも2150人のキリスト教徒が殺害されたとしている。
ナイジェリアは現在、世界で最もキリスト教徒が殺害されている国となっている。キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」が毎年発表している報告書「ワールド・ウォッチ・リスト」(2023年版)によると、ナイジェリアでは21年10月から22年9月までの1年間に、5014人のキリスト教徒が殺害された。これは、同期間における世界の殉教者総数5621人の89パーセントを占める割合となっている(関連記事:最新のキリスト教迫害国ランキング発表 「この30年で最悪の水準」)。
ワールド・ウォッチ・リストのナイジェリアに関する報告(英語)によると、1999年に北部の複数の州がシャリア(イスラム法)への忠誠を宣言して以来、強制的なイスラム化の動きが、暴力的・非暴力的であるかを問わず増加しているという。
特に2015年以降はイスラム過激派グループによる攻撃が一貫して増加。一方、政府はこうした攻撃に対し有効な対策を講じられていないという。代表的な過激派グループは、「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)などだが、イスラム教徒主体の遊牧民「フラニ族」の中の過激派による被害も深刻だとされている。