2011年に発生した東日本大震災とそれに伴う福島第1原子力発電事故から満12年がたった11日、日本カトリック正義と平和協議会の「平和のための脱核部会」(部会長:光延一郎神父)は、声明「すべての人が与えられたいのちを十全に生きることができるように」を発表した。
声明は、福島第1原発事故後、政府も含め脱原発の方向を向いていた日本社会が、12年たった現在は「あの時をすっかり忘れてしまったのではないか」と感じるほど、大きく変わってしまったと指摘。「私たちはもう一度、2011年3月11日のあの時のことを皆さんに思い起こしてほしいのです」と述べ、原発の危険性を訴えている。
原発の危険性については、地震、放射性物質、戦争の3つを列挙。このうち、戦争については、昨年2月に始まったウクライナ戦争で、ロシアが原発を威嚇的に攻撃していることを挙げ、「原発は、戦争による武力攻撃については施設設計において想定されていないため、一度戦争状態になれば、お手上げです」としている。
そのため、ウクライナ戦争によるエネルギー環境の悪化などを理由として、政府が2月、原発の再稼働や運転期間の延長、次世代革新炉への建て替え推進などを盛り込んだ「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定したことについて、「最悪の選択という他ありません」と批判。「気候変動は極めて深刻ですが、そもそも原発は放射能のゴミを作り出し、大量の温排水を海に放出して海水の温度を上昇させ、環境を破壊しているのです」と述べ、原発は気候変動の解決策にはなり得ないと訴えている。
その上で、「原発は、未来世代に渡さなければならない地球環境(持続可能性)も、少しでも健康的に正直に、自分自身を生きる権利(尊厳)も奪います」と強調。「『すべての人が与えられたいのちを十全に生きることができる』世界を望むのなら、持続可能性と私たち一人ひとりの尊厳を、決して手放してはならないと、私たちは考えます」としている。
声明のタイトル「すべての人が与えられたいのちを十全に生きることができるように」は、日本のカトリック司教団が「21世紀への司教団メッセージ」として、2001年に発行した『いのちへのまなざし』で掲げたもの。声明では、17年に発行した『いのちへのまなざし』の増補新版のほか、声明に関する関連図書も紹介している。