日本カトリック司教団は11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人へ 原子力発電の撤廃を―福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言―」とのメッセージを公式サイトで発表した。
同司教団はこのメッセージの初めに、「福島原発事故から5年半が経過し、日本がこのような事態に陥ってしまった中で日本司教団は、原子力発電の危険を世界のすべての人に知らせ、その撤廃を呼びかけるほかはないと考えるに至ったのです」などとして、その背景にある経緯を述べている。
その上で同司教団は、1)なぜ日本司教団は呼び掛けるのか、2)5年半を経て分かったことと学んだこと、3)原子力発電を推進する国家の姿勢、4)キリスト教信仰の視点から、5)国際的な連帯の呼び掛けという5つの項目について論じている。
「おわりに」の部分では、「イエス・キリストは、『互いに愛し合いなさい』(ヨハネ13・34)と、すべての人に呼びかけています。この呼びかけは、人類共通の家である地球を将来にわたって守る責任と義務についても問いかけているのではないでしょうか」としている。
「原子力発電の是非についてはさまざまな立場がありますが、人類が核エネルギーを手にした結果もたらされた害悪を認め、原子力発電の是非を将来世代をも含めたすべての人間の尊厳を守るという一点から判断しなければならないと、わたしたちは考えます」と同司教団は続けて述べている。「そして、すでに核エネルギーを利用している国々が選択すべき道は、原子力発電の撤廃を決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を推進していくことです。そのために、低消費、エネルギー節約、環境負荷の軽減などの研究と実践を促進し、環境問題に取り組む人々との連帯を深め、ネットワークを構築していく必要があります」
最後に同司教団は、「わたしたちは今一度立ち止まり、人類社会の目指すべき発展とは何か、真の豊かさとは何かを問い直さなければなりません。それは、発展からの後退ではなく、新たな豊かさに向けての前進であるはずです。地球家族であるわたしたち皆で手を取り合って、地球環境を保全する責任を自覚し、それぞれができることを行いつつ、惜しむことなく協力していきましょう」と呼び掛けてこのメッセージを結んでいる。
日本カトリック正義と平和協議会は14日、このメッセージの翻訳について、「世界に向け、まずは韓国語訳が作成されました。今後順次各国語に翻訳の予定です」と説明した。韓国語訳はこちら。
カトリック中央協議会からは10月4日、日本カトリック司教協議会『今こそ原発の廃止を』編纂(へんさん)委員会が編集した『今こそ原発の廃止を―日本のカトリック教会の問いかけ』が出版されている。
なお、このメッセージが発表された11日、インドのナレンドラ・モディ首相と日本の安倍晋三首相は、日本の原子力関連技術をインドへ輸出することを可能にする日印原子力協定に調印した。