英国国教会は6日から9日にかけてロンドンで開催した総会で、同教会の主教らが1月に発表していた同性カップルの「祝福」を認める提案(英語)への支持を決定した。これにより、英国では結婚する場合、挙式が義務付けられているが、同性カップルは同教会で挙式することはできないものの、市民婚(宗教施設以外で挙式を行う婚姻)やシビルパートナーシップ(婚姻相当の権利を認めること)の後に、同教会で祝福を受ける儀式ができるようになる。
主教らの提案に関する修正動議は9日、8時間以上に及ぶ討論の後、可決された。修正動議は、同性カップルの祝福を認める提案に加え、総会に対し「教会がLGBTQI+(性的少数者)の人々を歓迎できなかったこと、LGBTQI+の人々が教会生活の中で経験してきた、そして経験し続けている害悪を嘆き、悔い改める」ことを呼びかける内容も盛り込まれた。
一方、「一人の男性と一人の女性の間で生涯続くもの」とする結婚に関する英国国教会の教義を変更するものではないことも明記された。総会では、他にも多くの修正動議が出されたが、この修正動議が唯一、主教会の支持を受けて可決された。
修正動議に対する採決は、主教会、聖職会、信徒会に分かれて行われ、全てで可決された。
主教会:賛成36、反対4、棄権2
聖職会:賛成111、反対85、棄権3
信徒会:賛成103、反対92、棄権5
修正動議の可決を受け、主教会は今後数カ月かけて、1月に草案が発表されていた同性カップルの祝福のための祈りを含んだ「愛と信仰の祈り」(英語)を練り直し、独身主義などの問題を扱う新しい司牧指針を準備した上で、7月の次期総会までに提出する予定。
修正動議が可決された後、ロンドン教区のサラ・マラリー主教は演説で、この審議は多くの総会議員にとって「困難で大きな代償を伴う」ものだったと述べ、引き続き結束するよう訴えた。
英国国教会の次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルは9日の討論の中で、「愛と信仰の祈り」は任意のものだとし、次のように述べた。
「誰もこれら(同性カップル)の祝福式を行う義務はないのであって、行わなかったとしても誰も不利益を被ることはありません」
修正動議は、英国国教会の主席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーも支持している。ウェルビー大主教は8日の演説(英語)で、「(世俗の)文化に支配されているからではなく、聖書と伝統、そして過去6年の間に、非常に多くの人々により、非常に巧みに行われた膨大な取り組みの中で証拠付けられた根拠のために」支持するのだと語った。
可決された修正動議は、チチェスター教区のアンドリュー・コーンズ牧師によって提出された。コーンズ牧師は、イエスが「過激なまでに包括的」である一方で、結婚とセクシュアリティーについては「徹底的に保守的」であったと述べた。
「教会の主であるイエスに従う者として、私たちは私たちのドアを開けて入ってくる全ての人を、愛情をもって迎え入れなければなりません」
「性的に禁欲的な生活を望む人々に、私たちは喜んで祈りをささげることができます。しかし、私たちの中には痛みを伴う人もいることでしょうが、私たちはイエスがその性的側面において罪深いと言っている関係を祝福することはできません」
「これは常に英国国教会の教えであったし、私たちは全ての人に対し、そして何よりもキリストに対して、この教えが変わっていないと言う義務があります」
トゥルーロ教区のフィリップ・モーンスティーブン主教は、修正動議を支持することに対しある程度の「困惑」を感じたというが、「『結婚の教義』と『教会の融和』という2つの責任を両方保持することができるもの」と考え、支持したと語った。
「私は教義的な窮屈さを感じていますが、それ以上に、私たちが受け入れてきた(伝統的な)結婚の教義を熱心に信じています。私はそれが時代遅れであるとか、反啓蒙主義的であるとか、故意に排他的であるとは思いません。むしろ、私たちが宣言しているように、その深い聖奠(せいてん)的重要性は言うまでもなく、それは社会を豊かにするものなのです」
ロンドン教区のテミトープ・アイウォ氏は、修正動議に強く反対し、この変更はアングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)に属する他の聖公会にとって、「あまりにも代償が大き過ぎる」可能性があると述べた。
「私は、この(同性カップルの祝福を認める)方向性が、神の言葉の証しや権威、真実に対する信頼を放棄することにつながるものであり、本質的に英国国教会をその歴史的な式文から遠ざけるものであることを深く懸念しています」
英国国教会内の福音主義者らは8日、総会に対しこの修正動議を否決するよう求めた。セントエベス教会(オックスフォード教区)のボーン・ロバーツ牧師もその一人で、結婚とセクシュアリティーについて保守的な考えを持つ人々のために、調停による解決が必要だと主張した。
来賓として出席したコプト正教会のロンドン大主教アンバ・アンジェロスは、今回の結果は英国国教会の枠を「はるかに越えた」影響を与えると警告し、同性カップルの祝福と男女の結婚を区別することは「世界中の多くの人が容易に理解できるものではなく、むしろ単なる詭弁(きべん)に聞こえるだろう」と述べた。
別の来賓であるアレクサンドリア聖公会の首座主教であるサミー・フォージー・シェハタ大主教は、英国国教会に対し同性婚を祝福するという「一線」を越えないよう求めた。
「私は今日、私たちが使徒たちや初代教会よりもイエスの教えを理解できていると想像することはできません」
「結婚とセクシュアリティーに関する理解において、私たちには決して越えてはならない一線があります。同性婚を祝福するという一線を越えることは、アングリカン・コミュニオンの75パーセントを疎外し、エキュメニカルな対話と宗教間の対話を危険にさらすことになります。(同性婚の祝福を認めれば)この実践上の移行は最終的に損なわれ、壊れたコミュニオンにつながるでしょう」
「私たちは、英国国教会の伝統的な正統信仰を継承しているのです。どうか、アングリカン・コミュニオンの母教会として、その独自の立場を明け渡さないでください。それは、あなたがたの選択にかかっているのです」