第22回日本CBMC国家朝餐祈祷会が18日、国会議員や各国の大使を招いて、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急で行われた。教団教派を超えた教職信徒ら約120人が参加し、世界の平和と指導者のために祈りをささげた。
メインスピーカーには、7月の参院選比例選で初当選した牧師の金子道仁氏が登壇。「(イエス・キリストから)平和を受け取った私たちが、勇敢にこの社会に出て行って、平和を、赦(ゆる)しと和解を、十字架の贖(あがな)いを届ける者とさせていただきたい」と力を込めた。
国家朝餐祈祷会は1930年代に米シアトルで始まり、53年にドワイト・アイゼンハワー大統領(当時)が出席して以降、米国では現職の大統領が毎年欠かさず出席することで知られる祈りの運動。世界各国で広がりを見せ、日本では、世界90カ国以上にネットワークを持つ日本CBMCが2000年から毎年主催している。
会の冒頭で日本CBMCの青木仁志理事長は、世界平和のために家族を大切にすることを説いたマザー・テレサの言葉に触れ、「最も身近な人から、思いだけではなく行動によってその愛を示し、その輪がずっと広がっていくことによって世界が平和になる」と強調。「神様の御心は、お互いが裁き合ったり、傷つけ合ったりすることではなく、互いに愛し合い、互いを受け入れ合うことで世界が平和になること。心からの祈りをもって神様の御心をお互いに示していきたい」と語った。
音楽ゲストには、ウクライナ出身の国際的なオペラ歌手オクサーナ・ステパニュックさんが出演。ソプラノの中でも高音域のコロラトゥーラを得意とする華やかな歌声で、「主の祈り」など数曲を披露した。ステパニュックさんが日本語で、「私の芸術活動で、そして私の慈善活動で、この世界を美しい場所にしたいです。毎日神様に、私は感謝しています」と話すと、会場から大きな拍手を受け、ウクライナに対する祈りと支援に「深く心より感謝しています」と伝えた。
今年のテーマは「平和をつくる者」。金子氏は、十字架の死から3日目に復活したイエスが弟子たちに「平安があなたがたにあるように」と語るヨハネの福音書20章19、21節を引用。「この平安は、イエス・キリストが十字架で勝ち取った大きな勝利であり、凱旋(がいせん)品」と強調し、「一人一人がこの平安を受け取って、遣わされる所に届けていく者とさせていただきたい」と語った。
「平和の君」と呼ばれると、イエス・キリストの降誕を預言したイザヤ書9章の言葉も引用し、「平和をつくるその大本は、キリストの十字架にある」と指摘。神と人とを和解してくださるという平和の契約は、「イエス様ご自身がその血潮を流し、ご自身の命を投げ出すことで実現してくださった。その契約の当事者が復活して、今もその約束を守ると責任を持って言ってくださることを感謝したい」と話した。
国会議員になって痛感するのは、日本社会に福音の知らせが届いていないことだと語り、「だからこそ、イエス・キリストの十字架の贖いを知る一人一人が、神との和解をまず頂いて、私は愛され、赦された存在なのだ、だから私はあなたを愛します、赦します、(たとえ失敗しても、罪を認めても)大丈夫ですよとお伝えさせていただきたい」と話した。
その上で、「私たちのうちにある神と人との平和は、隣の人との和解になり、それがやがて国家間の平和へとつながっていく」と強調。「確かに時間がかかるかもしれません。あまりに現実を見ていないとお叱りを受けるかもしれません。でも私は、そこから平和が始まると信じ、この平和を、この十字架の赦しをお伝えさせていただきたい」と語った。
さらに、イエス・キリストが与える平安は、この世が与える平安とは違うと指摘。「この世が与える平安は状況による平安。でもイエス・キリストが与える平安は、内から泉のようにあふれてくる平安。周りの状況がどうであっても大丈夫という本当に不思議な平安です。私たちはぜひ、日々この平安を味わう者とならせていただきたい」と語った。
また、「キリストが与える平安は、臆病な平安ではない。患難の中で、前進していく平安」だと強調。「イエス・キリストは、十字架にかかるという患難さえも、平安の中で大胆に、勇気を持って進まれました。私たちも社会の中でこの福音を伝えていくときに、さまざまな困難に直面します。けれども、その患難の中にあってキリストの平安を持って勇敢に出ていき、愛を持ってこの社会に光を伝えていきたい」と語った。
出席者を代表し、ロングライフホールディング創業者で取締役の遠藤正一氏が経済とビジネス、岐阜市長の柴橋正直氏が行政と政治、キリスト教系NGO「オペレーション・ブレッシング・ジャパン」代表理事のドナルド・トムソン氏が社会問題と世界情勢を覚えて祈りをささげた。
祈りの前に遠藤氏は、「感謝しよう。感謝の念をもって、畏(おそ)れ敬いながら、神に喜ばれるように仕えていこう」と勧めるヘブライ人への手紙12章28節を引用。日本の敗戦直後、賀川豊彦をリーダーとするクリスチャンの代議士たちが日本のために祈りながら、社会福祉に関するさまざまな法律の成立に貢献したことを紹介し、「この信仰を次の世代に引き継いでいきたい。聖書の言葉そのままに、純真に伝えていこうという人たちをどんどん起こしていきたい」と語った。最近も政界にクリスチャンが増えていることに言及し、「われわれは自信を持って世の中で活躍していくべき。しっかりと神様に仕えていきたい」と話した。
その上で、「知恵浅く、力弱い者ですが、あなたの支えによって今日も全力を尽くして仕えていくことができますように。それぞれの信仰と肉体とを、あなたによって励ましてください」と祈った。
柴橋氏は、ローマ人への手紙8章19節「被造物も、切実な思いで神の子どもたちの現れを待ち望んでいるのです」を引用。「あらゆる領域における指導的立場にある方、現場のリーダーの皆さん一人一人が、主によって油注がれてそのリーダーシップを発揮し、人々を困難から救い出し、幸せを一人一人が感じられる日本の社会になるように祈っていただきたい」と語った。また、国会議員をはじめ、地方自治体の首長の中にもクリスチャンが続々と立てられていることに触れ、「こういったクリスチャンのリーダーたちが、神の子どもとして、被造物、あらゆる地域の方々、森羅万象の中にあって神の栄光を現せるように、ぜひ覚えていただければ」と話した。
柴橋氏は祈りの中で、「一人一人のリーダーの上に主の豊かな油注ぎを与えてくださり、その現場で起きている困難な問題について、主が解決の知恵を与えてくださり、一人一人が決してその困難によってふさがれることなく、主の励ましと平安と勇気の中にあって雄々しく立ち上がってこの社会の問題を解決し、そこに主イエス・キリストの栄光を現していくことができますように」と願った。
トムソン氏は、箴言29章25節「人を恐れるとわなにかかる。しかし主に信頼する者は守られる」を引用し、「人に対する恐れが社会を縛っています。でも大切なことは、主を畏れること。これが社会問題に取り組むために必要なもの」と話した。また、ヨブ記28章28節「主を恐れること、これが知恵である。悪から離れることは悟りである」を引用。「私たちが主を畏れることを一番大切なことにすれば、神様は知恵を与えてくださる。今の社会にはさまざまな恐れがありますが、それを取り除いて主を畏れるならば、主は問題の解決を与えてくださる」と語った。
ウクライナでの支援活動についても報告し、現地のウクライナ難民に仕えるクリスチャンのロシア人スタッフが、敵味方の関係を超えて、イエス・キリストの愛によって社会を変えていくことができると証しする動画を紹介した。
その上で、「ウクライナの問題に早期平和的解決がありますように。多くの避難民を顧みて、守ってくださいますように。私たちクリスチャンが主を畏れて、神様の知恵を頂いて、さまざまな問題に取り組むことができるように助けてください」と祈った。
会の最後に、実行委員会を代表して謝辞を述べた日本CBMC副理事長の山下純一氏は、ウクライナの問題とともに、世界にはサイレント・クライシスと呼ばれる人道危機が多くあると指摘した。アフリカでの干ばつによる深刻な飢餓問題や、アフガニスタンでの政変や干ばつ、新型コロナウイルスによる医療や経済状況の悪化、ミャンマーで続く国軍と武装勢力との戦闘による教育環境の深刻な悪化などを挙げ、「私たちの力は本当に小さなものですが、心合わせて主に祈るときに、私たちの創造主、全知全能の父なる神がその祈りに応えてくださり、一つ一つの問題に最善の方法と時をもって解決してくださると信じます」と語った。
また、日本CBMC前副理事長で国家朝餐祈祷会の実行委員長を務めながら、今年3月に召天したクリスチャン政治家の瀬戸健一郎氏にも言及。「40年来の親友でしたので、ここに彼がいないということは本当に寂しい思いでいっぱい」と語り、「けれども彼は今、天の御国からこの祈祷会に参加し、共に祈っていることを今日は実感することができました」と証しした。
山下氏は、「まだまだ小さな集まりですが、私たちの祈りに主が応えてくださり、この会を日本のリバイバルのために大いに用いてくださると信じたい」と語り、さらなる祈りと支援を呼びかけた。
祈祷会では、食前祈祷を新谷和茂牧師(日本基督教団高砂教会)、閉会祈祷・祝祷を峯野龍弘牧師(ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会)がささげた。会衆賛美は、日本基督教団赤坂教会でミュージックディレクターを務める蔵本順氏が導いた。