英与党・保守党は5日、ボリス・ジョンソン首相の後任を選ぶ党首決選投票を行い、リズ・トラス外相(47)がリシ・スナク前財務相(42)を破って勝利した。6日には、スコットランドのバルモラル城でエリザベス女王から任命され、英国史上3人目の女性首相として正式に就任した。
新首相が決まったことで、英国内のキリスト教指導者らも相次いでコメントを発表。エネルギー価格の高騰による生活費の急激な上昇やインフレの加速、ウクライナ戦争など、さまざまな課題が山積する現状を踏まえ、トラス氏のために祈りをささげるとともに、神の導きを求めた。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーはツイッター(英語)に、「このような難題を抱える時期に、(国の)リーダーシップという大きな責任を担うリズ・トラス氏のために祈っています」と投稿。「神が彼女を、そして政治に携わる全ての人々を、私たちの国に対する神の希望と、脆弱(ぜいじゃく)な人々に対する特別な配慮へと導いてくださいますように」と祈った。また、同教会は「国のための祈り」(英語)を公開し、「新首相を迎えるに当たり、この国のために共に祈りましょう」と呼びかけた。
英イングランド・ウェールズ・カトリック司教協議会会長のビンセント・ニコルズ枢機卿は、声明(英語)を発表。トラス氏に祝意を伝え、「祈りに満ちた支援」を約束する一方、貧困層に対する緊急の対応の必要性を訴えた。数ある課題の中でも「生活費の危機」を強調するニコルズ枢機卿は、「派閥の利益を優先させる時代は過ぎ去りました。今日、私たちが注目すべきは、高齢者、子どものいる家族、そして私たちが直面している生活費の大幅な増加を吸収することが最も苦手な全ての人たちです」と呼びかけた。
英国福音同盟(EA)のガビン・カルバー最高責任者(CEO)はツイッター(英語)に、「どうかリズ・トラス新首相のために共に祈ってください」と投稿。「リーダーシップとは常に難しいものであり、新首相にとってこれほど困難な状況は想像もつきません。生活費の危機、労働争議、ウクライナ戦争・・・数えればきりがありません」と述べた。
英国では記録的なインフレにより労働者のストライキが広がっており、経済対策が緊急の課題となっている。米ブルームバーグ通信(日本語版)によると、英経済は厳しい逆風に直面しており、今年の冬には数百万人が貧困に陥る恐れもあるという。トラス氏は、減税によって生活費の危機に対応することを公約として掲げてきた。当選後は党幹部に対し、「今後2年間に政策実行力があることを示す必要がある。減税と経済成長のための思い切った計画を実行する」と表明した。
数学者の父と看護師・教師の母の元に生まれたトラス氏は、1996年に英オックスフォード大学を卒業。民間企業で働いた後、2度の落選を経て、2010年に庶民院(下院)議員として当選を果たした。その後は保守党政権下で、環境相や司法相、国際貿易相、女性・平等相、外相、欧州連合(EU)離脱担当相などを歴任した。
内政は経済対策が最優先課題になる一方、ブルームバーグ通信によると、外交面では冷え込む欧州連合(EU)との関係改善などが課題。また、ウクライナを侵攻したロシアに対しては強硬姿勢を維持し、中国の英国に対する投資は取り締まる方針だという。
夫との間に2人の娘がいる。信仰については英PA通信(英語)に対し、「キリスト教信仰と英国国教会の価値観は共有していますが、日頃から実践している宗教熱心な人というわけではありません」と回答している。