安倍晋三元首相の国葬が閣議決定されたことを受け、日本基督教団社会委員会(森下耕委員長)と日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長)が1日、それぞれ声明を発表した。
日本基督教団社会委は声明で、「強い懸念と憂慮」を訴え、再考と撤回を要求。「岸田内閣の閣議の恣意(しい)的判断によって国葬とされる儀式に国費を支出することは、国の財政権限を国会決議に基づかせる憲法第83条違反」と主張した。また、国葬となれば、全国の都道府県や教育機関への弔旗・記帳台設置などが指示され、「国民の弔意が事実上、権力によって強いられることとなり、言論が封じられ、人間の思想・良心の自由を保障する憲法第19条の重大な違反」になるとした。
安倍氏が在任期間中に行った集団的自衛権行使を容認する閣議決定、安全保障関連法や特定秘密保護法、共謀罪法の制定については、「平和憲法の精神を逸脱した」施策だと批判。国葬の閣議決定は、「それら今後の国の姿を変えてしまう考慮を欠いた判断を支持することにもなる」とした。
また、今回の銃撃事件を契機に、自民党をはじめとする政界が、霊感商法や献金強要被害などの問題を指摘されている世界平和統一家庭連合(旧統一協会)と根深い関係を築いてきたことが明らかになりつつあると主張。特定の人間の国葬化は、憲法第19条に違反するだけでなく、聖書が警告する「人間の神格化」を意味するものでもあるとし、「あたかも故人の遺志を国家的に継承するかのような『国葬』の政治利用によって、憲法改定の国民的気運の形成につなげられることは決してあってはならず、何よりも民主主義の根幹を揺るがすことになりかねません」とした。
日本カトリック正義と平和協議会は声明で、「『国葬』を、国権の最高機関である国会での審議を経ずに決定することは、民主主義の根幹を揺るがすことだと言わざるを得ません」と強く反対を表明。過去には国葬が天皇主権の国家体制と深く結び付き、国家統合を図る政治的な目的があったことは否定できないとし、「『国葬』がこうした過去に連なることを、私たちはまず危惧します」とした。
その上で、国葬は「国家が主催し、国費をもって実施する葬儀であり、国家から功績が評価された偉人への弔意を、国民皆に強いるもの」とし、「人の死を悼み弔うという個人の内面的な営みに、国家が介入することは許されません」と主張。憲法19条に矛盾するとした。
日本基督教団社会委と同様、安全保障関連法や特定秘密保護法、共謀罪法については、「合憲性が疑われています」「人間の内心の自由を侵害する法律」などと批判。安倍氏については、森友学園や加計学園、桜を見る会、旧統一協会とのつながりなど、真相解明が必要な数多くの問題を残しており、評価は二分されているとし、「このような現状で『国葬』を強行すれば、国民を分断することになりかねません」と訴えた。
続報(4日):日本キリスト改革派教会の宣教と社会問題に関する委員会(弓矢健児委員長)も3日、声明を発表し、「『国葬』に関する法律がないにもかかわらず、政府が閣議決定で『国の儀式』として『国葬』を行うことは、立憲主義を無視した違法な行為」と強く反対を表明し、撤回を求めた。また、国葬を強行すれば、「安倍元首相に対するさまざまな批判を封殺し、自由な言論を抑圧することにもなりかねません」とした。