安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件に関連し、日本基督教団カルト問題連絡会は20日、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の被害者と関係がある人々に向けた文書を発表した。文書では、旧統一協会やその信者の心情を理解しないまま、信者本人に直接連絡すると、話し合いが感情的になり、事態が悪化する場合もあるとし、「一人で悩みを抱えこまず、すぐに相談窓口を頼ってください」と呼びかけている。
銃撃事件を起こした山上徹也容疑者(41)は、旧統一協会信者の母親を持つ「信者2世」。母親が多額の献金をして家庭が崩壊したことで旧統一協会に恨みを抱き、関係があると思った安倍氏を狙ったと供述しているとされる。
連絡会は文書で、「信者2世」や「祝福2世」(旧統一協会で合同結婚をした両親の間に生まれた子ども)は多くの場合、「親が(旧)統一協会の活動へ邁進(まいしん)することについて、深刻な葛藤を抱いてはいるものの、犯罪や暴力とは無縁で、今回のような殺人に心を痛めており、このような行為が繰り返されてはならないと考えています」と説明。「信者2世であることと今回の犯行は直結するものではありません」としている。その一方で、旧統一協会によって家庭を破壊された人々が今も苦しんでいるとし、政治家や著名人が旧統一協会を支持・応援することで、「新たな被害者を生み出し続けている現状にも目を向けなければなりません」としている。
連絡会は約30年にわたり、旧統一協会の被害者やその家族から相談を受けてきたが、現在も多くの相談が寄せられているという。文書では、日本基督教団がこれまでも旧統一協会の活動を憂慮し、被害者救済に取り組む決意を表明してきたことに触れ、今後も全国霊感商法対策弁護士連絡会やカルト問題キリスト教連絡会と連携し、被害相談に対応していくとしている。
一方、旧統一協会や関連団体に関わり、その活動を支持・応援している政治家や著名人、キリスト教関係者らに対しては、速やかに関係を解消し、被害を拡大させないよう要請。「どうか、金銭的・身体的・精神的被害をもたらす反社会的集団の信用を高める宣伝に加担し、被害者を生み出し続けることのないよう、心からお願い致します」と強く求めている。
旧統一協会の被害事例や被害者の相談事例、これまで起きてきた刑事裁判、民事裁判などについては、全国霊感商法対策弁護士連絡会や全国統一協会被害者家族の会のホームページで確認することができる。また、被害の相談は日本基督教団の各教区事務所でも受け付けている。