世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長)は2日、オーストリアの首都ウィーンで21~23日に開催される核兵器禁止条約の第1回締約国会議を前に、関係各国や日本政府への要望をまとめた声明を発表した。
完全な核兵器廃絶を目指す核兵器禁止条約は、2017年7月に国連加盟の122カ国が賛成して採択され、21年1月に発効した。締約国会議は、条約の運用などについて話し合う批准国による会議。当初は今年1月に予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で2回にわたり延期され、約半年遅れで条約発効後の最初の会議として開かれる。
WCRP日本委は声明で、会議の開催は「核兵器廃絶への歴史的な前進」だと歓迎。「条約に一層強固な実効性、妥当性、正当性を付与し、そして締約国のさらなる増加によって普遍性を高める議論が行われる」とし、その意義を強調している。
一方、2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に触れ、「昨今の緊迫化した国際社会は、核兵器使用のリスクが極度に高まっていると認識せざるを得ない状況にある」と指摘する。日本においても、核シェアリング(核兵器の共有)の導入や非核三原則を否定する主張などが出てきているが、声明では「あらためて、核抑止は取り返しのつかない大惨事を招く大変危険な政策であることを主張したい」と強調。核抑止は、核兵器の使用を前提とした政策であるとし、「このような疑心暗鬼を生み出す政策はかえって相互の憎悪を増長し、むしろ核使用の危険性を一層高める」としている。
その上で、関係各国と日本政府に対し以下の5項目を要望。世界の宗教者と共に、核兵器廃絶に向けて決意を新たにするとしている。
■ WCRP日本委による要望の概要
- 会議の参加国は、核兵器禁止条約がより普遍的かつ実効的に運用されるために前向きな議論をすること。
- 日本政府は、会議への不参加が多くの人々の失望と落胆を招いたことを認識し、日本国として速やかに核兵器禁止条約を署名・批准し、締約国になること。
- 日本政府は、締約国でなくとも、唯一の戦争被爆国として長年にわたって蓄積してきた経験と知見を、会議の議論に生かせるよう積極的に貢献すること。
- 日本政府は、非核三原則を堅持し、核兵器に依存しない日本の平和と安全を構築する政策について検討すること。
- ウクライナ情勢に関わる関係各国は、即時停戦に向けた適切な措置を継続的に実施し、冷静かつ忍耐強く外交努力を続けること。核保有国は、ウクライナ情勢の緊迫化によって、核兵器使用といった不測の事態が起きないよう熟慮した対応を行うこと。