50カ国・地域が批准し「核兵器禁止条約」の発効が決まったことを受けて、神道や仏教、キリスト教などの宗教諸派でつくる世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長=日本聖公会首座主教)は25日、「歴史的な偉業の達成」だとし歓迎する声明を発表した。
WCRP日本委は声明で、「広島、長崎の被爆者をはじめ、世界の核実験、核兵器開発過程で被害を被ってきた方々は、『ふたたび被爆者をつくらない』という信念のもと、これまで筆舌に尽くしがたいご努力で、同条約の支持を先頭に立って訴え続けてこられました」と言及。条約の発効要件である50カ国・地域の批准は「核兵器廃絶を願うすべての人々のこうした地道な努力の賜物」とたたえ、「『核兵器なき世界』に向けて大きな前進であり、その現実をめざす人々に多大な勇気を与えるもの」と、その意義を強調した。
同条約をめぐっては、その採択に対する功績が認められ、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)がノーベル平和賞を受賞するなどしている。しかし、今も世界には1万3千発以上の核弾頭が存在し、その約9割を保有する米国とロシアをはじめ、核を保有する英国、フランス、中国の5カ国は、現在の「核拡散防止条約」(NPT)枠内での軍縮を主張し、参加していない。さらに、米国の「核の傘」の下にあるNATO加盟国や、米国と軍事同盟を結ぶ日本や韓国、オーストラリアなども参加を見合わせている。
そのためWCRP日本委は声明で、唯一の戦争被爆国でありながら参加に慎重な日本政府に対し、▽核兵器廃絶への行動の強化、▽核抑止政策の信ぴょう性の検証、▽同条約の締約国会合へのオブザーブ参加を要請。「同条約の発効から目をそむけず、国際法として尊重し、誠実に向き合う」よう求めている。その上で「諸宗教者が集う連合体として、引き続き、さまざまな国際ネットワークとともに、祈りと平和の行動を通して、『核兵器なき世界』の実現に力を尽くす」と決意を示している。
核兵器禁止条約は、核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁じる条約で、2017年7月に国連で採択された。バチカン(ローマ教皇庁)は同年9月に同条約を最初に批准した3カ国の1つ。50カ国・地域の批准後90日で発効することが定められており、24日に中米ホンジュラスが批准したことで要件を満たした。発効は来年1月22日。