核兵器禁止条約が発効したことを受け、被爆地である広島と長崎のカトリック司教と大司教が22日、共同声明を発表した。声明は「この喜びをともにしたい」として、条約発効を歓迎。一方、核兵器のない世界を実現するためには、すべての国が条約に参加する必要があると強調。日米同盟を理由に参加を見合わせている日本政府に対し、条約の署名・批准を求め、核兵器保有国と非保有国の対話と核軍縮において、唯一の戦争被爆国として役割を担っていくべきだと訴えた。
核兵器禁止条約は2017年7月7日、国連本部で開かれた交渉会議で採択された。その後、各国・地域が批准を進め、昨年10月24日に批准国・地域が50カ国に到達。規定により90日後の今年1月22日に発効した。条約をめぐっては、その採択に対する功績が認められ、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)がノーベル平和賞を受賞するなどした。
広島教区の白浜満司教と長崎大司教区の髙見三明大司教は共同声明で、22日は「核兵器のない平和な世界を切望する数知れない多くの人が待ちに待った日」「最終段階が始まる日」「大変意義深い日」だと述べ、条約発効を歓迎。条約は「核兵器廃絶のためにこれ以上ない有効なもの」だと強調した。
一方、核兵器を廃絶するためには、「核兵器の開発・実験・生産・取得・貯蔵・配置・移譲・使用あるいは使用するとの威嚇などの禁止のみならず、被害者への援助や環境の修復、国際的な協力」が必要だと指摘。すべての国の参加が求められていると語った。
その上で、すべての国の参加を実現するために乗り越えなければいけない「最後の大きな壁」として、核保有国や日本など「核の傘」の下にある国々に根強くある核抑止論を挙げた。これらの国々は、核兵器禁止条約の有効性を認めず、署名も批准もしていない。日本政府も「日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要」だとして、参加を見合わせている。
こうした日本政府の姿勢に対し、白浜司教と髙見大司教は「唯一の戦争被爆国として、この条約の発効が実質的な結果をもたらすよう、日本が率先して署名・批准し、核兵器保有国と非保有国の対話と核軍縮とを推進する役割を担うべき」と訴えた。
2人は「核兵器のない世界が可能であり必要」だと確信していると強調。「核兵器保有国も非保有国も含めてすべての人が一致して核兵器のない世界の実現のために参加する必要がある」と述べ、「核兵器禁止条約の批准国が世界の大勢を占め、核保有国も批准をし、同条約が完全に実施されるよう神に祈り、そのために働きかける決意を新たにします」とした。