教会が運営していたカナダの寄宿学校で長年にわたり、先住民の子どもたちが虐待を受けていた問題で、英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは被害者らと面会し、謝罪の言葉を語った。
ウェルビー大主教は4月30日、カナダ中西部サスカチュワン州の先住民保護地区を訪問。ジェームズ・スミス、チャカステイパシン、ピーター・チャップマンの3つの先住民の代表者らと会談し、謝罪した。
カナダのニュース専門テレビ局「グローバルニュース」(英語)によると、ウェルビー大主教は面会した先住民らが寄宿学校で受けた虐待について聞き、「申し訳ないです。言葉で言い表せないほど申し訳なく思っています」と謝罪。「恥ずかしく、恐ろしい限りです。キリストと関わりようのないこのような悪がどこから来るのか自問しています」と述べ、「聖書を読み聞かせながら子どもを虐待するなんて、最低で、邪悪で、恐ろしいとしか言いようがありません」などと語った。
先住民らは、こうした心からの謝罪は助けになるとしつつも、言葉に見合った行動も求めた。
グローバルニュースによると、先住民の一人であるロンダ・サンダーソンさんは、「言ったことを行動に移してください。言うだけ言って、何もしないのは一番がっかりしますから」と語った。
先住民の子どもを対象とした寄宿学校は、カナダ政府の同化政策によるものだったが、その多くはさまざまな教派の教会が運営した。その中でも最も多くの寄宿学校を運営していたカトリック教会は、問題への取り組みのために3千万ドル(約38億円)を拠出することを決定。ローマ教皇フランシスコは4月初め、先住民の代表者らと面会し、カトリック教会の責任を認めた上で公式に謝罪した(関連記事:ローマ教皇、カナダ先住民に対する寄宿学校虐待問題で謝罪 司教協議会、首相も声明)。
一方、グローバルニュースによると、聖公会も1820年から1969年にかけて、カナダ全土で約30の寄宿学校を運営していた。ウェルビー大主教は、英国国教会の主席聖職者であるとともに、アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)の霊的最高指導者の立場にもある。しかし、各国・地域の聖公会はそれぞれが独立して自主的に活動していることから、「カナダ聖公会はカナダ聖公会であり、私は海外から来た者です。取り組むことができるのは私ではありません」などと述べ、カナダ聖公会が主体となって取り組む必要性を語った。
カンタベリー大主教の公式サイト(英語)によると、ウェルビー大主教は翌5月1日には、同州の州都プリンスアルバートで開かれた先住民の集会に参加。寄宿学校で行われた虐待について、歴史的な形で英国国教会も関わった「重大な罪」であり、「人種差別の罪」「われわれが直面する最悪の罪」だとして謝罪した。また「私たちは、皆さんと共にあるのではなく、皆さんを見捨てたのです」と告白し、「主がそうする力を与えてくださる限り、私は皆さんと共に(再生と和解の旅路を)歩むことを約束します」と述べた。