19世紀から1990年代まで、カナダの寄宿学校で先住民の子どもたちに大規模な虐待が行われていた問題で、ローマ教皇フランシスコは1日、カトリック教会の責任を認めて謝罪した。
教皇はこの日、バチカンでカナダの先住民の代表団と会談。カトリック教会の関係者によって行われた虐待を「嘆かわしい行為」と呼び、「憤りと恥を感じる」と語った。
代表団は会談で、先住民の子どもたちが同化政策の名の下、家族や地域社会から強制的に引き離された寄宿学校制度について語った。教皇は代表団を前に、「カトリック教会のメンバーたちの嘆かわしい行為に対して、私は神の赦(ゆる)しを請い、心を込めて皆さんに申し上げたいと思います。本当に申し訳ありませんでした。そして、私の兄弟であるカナダの司教たちと共に、皆さんの赦しを求めます」と述べた。
教皇はさらに、「劣等感を植え付け、文化的アイデンティティーを奪い、人々のルーツを何が何でも断ち切ろうとするこの試みを考えると、また、それが個人的にも社会的にもあらゆる影響を及ぼし続け、解決できないトラウマが世代を超えたトラウマになっていることを考えると、震える思いです」と続けた。その上で、今年後半にカナダを訪問することを約束した。
カナダでは同化政策に基づき、先住民の子どもたち約15万人が寄宿学校に送られ、その多くが虐待を受けるなどひどい状況に置かれたとされている。こうした寄宿学校の多くは、カトリック教会によって運営されていた。昨年には、カトリック教会が運営していた同国最大の寄宿学校跡地で集団墓地が発見され、215人の子どもの遺体が見つかっている。
カナダの真実和解委員会は、2015年に発表した報告書で、少なくとも6千人の子どもたちが寄宿学校で死亡したと推定している。しかし、正確な数は依然明らかになっていない。
教皇の謝罪を受け、カナダ・カトリック司教協議会(CCCB)は声明を発表(英語)。CCCB副会長のカルガリー司教ウィリアム・マクグラタンは、「カトリック者として、私たちは謝罪の回復力を信じています。しかし、過ちを認めることは、癒やしの旅の一歩にすぎません」とし、「私たちは皆、植民地主義の歴史によって開かれた傷を癒やす役割を担っており、この責任に深くコミットしなければなりません」と述べた。
CCCBはすでに、「癒やしと和解のイニシアチブ、生存者が寄宿学校の関係文書を利用できるようにする責任、聖職者や修道士・修道女、信者に、先住民の文化や霊性についての教育を提供する継続的な取り組み」のために、3千万ドル(約37億円)を拠出することを決めている。
カナダのジャスティン・トルドー首相も、教皇の謝罪を受けて声明(英語)を発表。正義を追求する生存者らの「勇気と決意」を称賛し、「この謝罪は、責任機関に直接真実を語り、自らのつらい記憶を詳述し、追体験した生存者がいなければ実現しなかったでしょう」と言い、次のように述べた。
「何十年もの間、(カナダの先住民である)ファーストネーション、イヌイット、メティスの皆さんは、これらの寄宿学校に通っている間に彼らの子どもたちが耐えた精神的、文化的、感情的、身体的、性的虐待を認めるよう教皇に要求してきました。何十年もの間、彼らは謝罪を待ち望んでいたのです。
カナダの歴史は、少なくとも15万人の先住民の子どもたちを、家族や地域社会から強制的に引き離し、多くの場合、遠く離れた場所で、自分たちの文化や伝統を実践し、自分たちの言葉を話すことを禁じた寄宿学校制度という悲惨な現実によって永遠に汚されることになるでしょう。生存者とその家族、そして地域社会にとって、寄宿学校制度が残した痛ましい遺産は日々つきまとうのです。
昨年、全国の寄宿学校の跡地で無縁墓が発見され、カナダ国民は、自国の失敗とその影響が今日まで続いていることについて考えざるを得ませんでした。国としてわれわれは、実際に起こったこの想像を絶する悲劇を決して忘れてはならず、行方不明となり、家に帰れなかった子どもたちに敬意を払わなければなりません」