東方キリスト教に関わる日本の研究者らは27日、ロシアのウクライナ侵攻を「全世界の平和と普遍的な人道を毀損(きそん)するもの」だとして強く非難し、一刻も早い平和と安全の回復を求める共同声明を発表した。共同発起人は、いずれも東京大学に所属する砂田恭佑(総合文化研究科特別研究員)、浜田華練(同准教授)、細川瑠璃(教養学部非常勤講師)の3氏。東方キリスト教に何らかの形で関心や関わりを持つ個人に対しては、賛同者としての協力を呼び掛けている。
共同声明は、「東方キリスト教という、本邦でもいまだなじみの薄い伝統と、それを源泉とする神学、哲学、文学、歴史、芸術を研究し、それに対する理解を広めようとしてきた私たちにとって、東方キリスト教が根付き豊かに花開いた地域であるロシアとウクライナにおいてかかる戦争が起こっていることは、まことに悲しく残念というほかありません」と表明。「ロシア・ウクライナ両国民の人命が、これ以上身勝手な論理によって失われないこと、そして当事者どうしの、また当事者へ向けた敵意がこれ以上増大することがないことを強く願います」と訴えている。
また、「私たちはいかなる時代、いかなる地域においてであれ、武力や権力により個人の権利と自由を加害することを非難し、宗教思想がそれを正当化するときにはいつでも、そのような悪用に断固として抗議します」と強調。その上で、「近い将来であれ遠い未来であれ、東方キリスト教を源泉とする思想伝統における、人間性全体をかけた根源的善への希求、全人類の幸福と連帯を視野に持つ雄大さ、相互の差異を承認しつつ思想・伝統間の対話へと開かれた多極性、その他あらゆる在り方が、両地域に限らず全世界にとって、真の平和を実現し戦争という一方的な実力行使の可能性を無化する真の光となることを信じ、今後も学究と理解の促進に励む決意をいたします」としている。