岩村義雄氏(神戸国際キリスト教会牧師)が理事長を務める神戸国際支縁機構は25日、「『ウクライナ和平宣言文』共同コミュニケ(声明)」を発表した。コミュニケは「戦争に大義はない」と訴える一方、「ロシア悪玉論では出口はない」と指摘。すでに2カ月余り続くロシア・ウクライナ間の戦争について、日本、中国、インドの3カ国が仲裁に入ることを提案している。
コミュニケは、冷戦期の代理戦争と化したベトナム戦争や、2001年の米同時多発テロ後に始まり、昨年8月に米軍が撤退して終結したアフガニスタン戦争、03年のイラク戦争などに言及。アフガニスタンでは米軍撤退後すぐにタリバン政権が再建し、イラクでは米国が攻撃の理由とした大量破壊兵器が結局見つからず、今も治安が回復していない状況などを指摘している。一方、ロシアについても、撤退を余儀なくされたソ連時代のアフガニスタン侵攻や、泥沼化したチェチェン戦争に触れ、「戦争に大義はない」と訴えている。
岩村氏は50年前、フィリピンの首都マニラで開催された国際会議で、米国やウクライナなどの青年らと夜を徹して平和について話し合った経験があるという。当時は冷戦中であったことから、米国やウクライナの青年らは反共産主義的な傾向が強く、信教の自由を認めない共産圏には戦争も辞さないという考えがあったとし、「和解への意見がかき消された苦い経験があった」と語る。また、キリスト教を奉じる西側諸国の二元論的な姿勢にも挫折を感じたという。
現在のロシア・ウクライナ間の戦争に対する日本のメディアの報道姿勢については、「ウクライナ頑張れ、ロシア軍を押し戻せ、プーチンは悪玉と繰り返している」と主張。「今、日本人は冷静に考えるべきである」「ロシア悪玉論では出口はない」とし、ロシアとウクライナを仲裁する存在が必要だと訴える。
具体的には、仲裁国として、日本、中国、インドの3カ国を提案している。中国については、「次は米中戦争(中台戦争)とさえいわれている」とし、あえて今回の仲裁国に加えるのだという。また、インドは中国と共に、国連総会でロシア非難決議を棄権しており、「ロシアが聞く耳を持つ可能性が高い」としている。
日本については、難民を受け入れるなどしており、ウクライナが「日本の交渉に委ねる可能性がある」とする。また、日本の憲法9条は「諸外国にない人類の宝」であるとし、「これまでのように日本は傍観者アウトサイダーでいいわけがない。憲法9条がある故に、世界平和のために日本が中国、インドに呼び掛ける立場があろう」としている。