フランスのカトリック教会における性的虐待を調査していた独立調査委員会は5日、1950年以降の70年間に、推計で3千人余りの聖職者が性的虐待に関与していたとする最終報告書を発表した。被害者の8割は少年で、多くが10代前半に被害を受けていた。教会に関係する被害者は推計33万人で、このうち聖職者による被害者は推計21万6千人に上るという。
独立調査委員会は、フランス・カトリック司教協議会の依頼を受け、2018年に発足。委員長を含め22人の委員で構成され、各委員は無報酬で調査に当たった。ジャンマルク・ソベ委員長は3日、最終報告書の発表を前に米CNNのインタビュー(英語)に応じ、この70年間にフランスのカトリック教会で働いていた小児性愛の聖職者は推計で2900~3200人に上るとし、次のように語った。
「(調査のために)私たちは、歴史的、社会的、医学的、精神医学的な視点を横断し、児童保護、ソーシャルワーク、虐待問題、神学や法律分野のスキルを駆使しなければなりませんでした。私たちは虐待の被害者と共に多くの仕事をし、すべての被害者の声を聞く作業を調査研究施設に委ねたりはしませんでした。無論、調査研究施設も一部はヒアリングを行いましたが、私たち自身で膨大な数のヒアリングを行いました」
ソベ氏はAFP通信(英語)に対し、2500ページにわたる最終報告書には、小児性愛者がカトリック教会内で働き続けることを許された「制度的」および「文化的」なメカニズムに注目した45の提案が盛り込まれていると述べている。
カトリック教会はここ数年、聖職者による性的虐待や高位聖職者がそれらを隠蔽してきたことなどが発覚し、危機的な状況に陥っている。これに対しこれまでは、より高い透明性の確保や説明責任の明確化、調査の実施などの対応が取られてきた。
ローマ教皇フランシスコは19年5月、聖職者に対し、これまで教会関係者の独自の裁量が認められていた性的虐待に関する報告を義務付ける自発教令の形を取った使徒的書簡を発表。各教区に対しては、内部告発者や被害者の保護を強化するための制度整備を義務付けた。フランスでは被害者による告発が相次いでいたため、この義務付け以前に独立調査委員会が設立されていた。
この使徒的書簡が発表される前の19年2月には、全世界の司教協議会会長らを対象に、バチカンで「教会内の未成年者の保護」をテーマにした初の会議を開催。教皇はこの席で、「教会と人類を悩ます悪」である性的虐待と戦わなければならないと強調し、次のように述べていた(関連記事:性的虐待問題でバチカン初会議、教皇「断罪の言葉でなく、具体的措置を」)。
「総大司教と枢機卿の皆さん、大司教と司教の皆さん、また修道院長や教会指導者の皆さん。私は皆さんのご意見を拝聴したいのです。それは共にご聖霊が導く声に耳を傾け、正義を求める小さき者たちの叫びを聞くためです」
「神の聖なる民は、私たちに期待を寄せています。それは単純かつ予測可能な断罪の言葉ではなく、具体的かつ効果的な措置を取ることです。私たちは具体的でなければなりません」