バチカン(ローマ教皇庁)で21日、カトリック教会内の児童性的虐待撲滅を主題とした初の会議が始まった。ローマ教皇フランシスコは、会議に集まった約190人の教会指導者らに対し、この危機を終結させる具体的な解決策を見いだすよう求めた。
会議は「教会内の未成年者の保護」をテーマに、全世界の司教協議会会長をはじめ、修道会の総長や教皇庁の各関係機関の責任者らが参加して、24日まで続く。開会の辞に立った教皇は、性的虐待を「教会と人類を悩ます悪」と表現し、教会指導者らがこれと戦う道を見いだすよう懇願した。
バチカンの公式サイト(英語)によると、教皇は次のように語った。
「総大司教と枢機卿の皆さん、大司教と司教の皆さん、また修道院長や教会指導者の皆さん。私は皆さんのご意見を拝聴したいのです。それは共にご聖霊が導く声に耳を傾け、正義を求める小さき者たちの叫びを聞くためです」
「神の聖なる民は、私たちに期待を寄せています。それは単純かつ予測可能な断罪の言葉ではなく、具体的かつ効果的な措置を取ることです。私たちは具体的でなければなりません」
また教皇は、「今日からの数日間、ご聖霊が私たちを支えてくださり、私たちがこの悪を認め、清める機会としてくださいますように」と祈った。そして「聖母マリアが私たちを啓発してくださり、小さき者や信者たちが受けた、小児性愛による深い傷を癒やしてくださいますように」と祈りの言葉を結んだ。
会議では、虐待被害者の証言を事前に聞き取った記録が教会指導者らに公開された。
米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)によると、匿名で語ったチリの虐待被害者は次のように証言した。
「私に対する彼らの最初の反応は、私をうそつき呼ばわりすることでした。彼らは私に背を向けて、私も他の人たちも教会の敵だと言いました。こうしたパターンはチリだけではありません。世界中にあるのです。このようなことは終わらせなければなりません」
過去数年にわたり、カトリック教会は性的虐待問題に取り組んできた。多くの聖職者による子どもたちへの虐待が明るみに出たが、一方では教会上層部による隠蔽(いんぺい)工作があったことも判明した。
米ペンシルベニア州の大陪審は昨年8月、301人の司祭による子どもたち千人余りへの虐待を記録した1300ページにわたる報告書を提出し、教会上層部による犯罪の隠蔽を公表した。
世界中でこうした虐待が明るみに出たことを受け、教皇は同月、カトリック教会の全信徒に向け、この問題のために祈りと悔い改めを求める「神の民への教皇フランシスコの書簡」を公表。同9月には、バチカンで会議を開催し性的虐待問題に対処すると発表した。
英デイリー・テレグラフ紙(英語)によると、会議の実行委員で教理省次官補佐のマルタ大司教チャールズ・シクルナは、会議開催前に次のように述べた。
「透明性という点で、私たちは今日、新たな一日を迎えました。司教たちは説明責任を問われることになるでしょう。私の願いは、これが教会の分岐点となることです」