日本のカトリック教会は5日、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を迎えた。カトリック教会の聖職者による性虐待が世界各地で報告される中、ローマ教皇フランシスコが5年前に全世界の司教団に設置を指示。日本では四旬節第2金曜日とされ、今年は3月5日が該当する。
日本のカトリック中央協議会に設置された「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」は、この日のために約5分半の動画「祈りのひと時をともに」を作成。動画では「ミサや行事に参加し、被害者の痛み・苦しみに寄り添い、祈りと償いのうちに過ごしましょう」と呼び掛けている。
また、動画の中で示される「私たちにできること」では、四旬節の期間に合わせ、祈りや断食などの犠牲の行いのひと時を持つよう推奨。その上で、トラウマなど性虐待が被害者の心身に及ぼすさまざまな影響について調べたり、教会生活における力関係・支配関係に目を向けたりすることを勧め、「弱い立場に追いやられている人はいませんか。その人の痛み、苦しみ、傷つきに心を寄せ、自分のふるまいについても見直す時を持ちましょう」と呼び掛けている。
東京大司教区の菊地功大司教は、教区のホームページに掲載した文章で、聖職者による性虐待またその隠蔽は「日本の教会も例外ではありません」と指摘。「無関心や隠蔽という教会の罪を認めるとともに、被害を受けられた方々に心からお詫び申し上げます。同じようなことが繰り返されないように、信仰における決意を新たにし、愛のうちに祈り、行動したいと思います」とつづっている。
日本カトリック司教協議会は昨年4月、国内で発生した聖職者による性虐待の調査結果を発表。それによると、被害の訴えは確認できただけでも16件あった。被害の発生は1950年代から2010年代までと幅広く、被害者の当時の年齢は、6歳未満が1件、6〜12歳が5件、13〜17歳が6件、不明が4件だった。加害聖職者は、教区司祭が7件(日本人)、修道会・宣教会司祭が8件(外国籍7件、日本人1件)、不明1件(外国籍)。このうち加害を認めているのは4件のみで、否認は5件、7件は認否不明だった。また、否認の場合でも、第三者委員会による調査が行われたのは1件、教会裁判が行われたのは1件のみだったとされる(関連記事:日本のカトリック聖職者による児童性的虐待、訴えは16件 司教協議会が調査結果を発表)。
こうした中、昨年7月には国内の被害者らによる「神父による性虐待を許さない会」が発足。発足時に行われた集会では、被害者の男女3人がそれぞれの体験を語るなどした。集会は2年前に国内で初めて被害を実名告発した竹中勝美さんらが中心となって開かれ、竹中さんは被害者であるにもかかわらず、調査結果が直接報告されることなど一切なかったとし、カトリック教会側の不誠実さを訴えていた(関連記事:カトリック神父の性虐待被害者3人が体験語る 「悲しみと怒りで全身が震えた」)。
さらに昨年9月には、約40年前に仙台司教区の男性司祭から性被害を受けたとして、仙台市在住の鈴木ハルミさんが司祭と教区などを相手取り、国内初となる訴訟を提起。同年12月には、長崎大司教区の男性司祭から性被害を受けたと訴えている女性信者が、日本カトリック司教協議会の会長でもある同教区の髙見三明大司教の発言により2次被害を受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こすなどしている。
東京大司教区のホームページには、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」が作成した「性虐待被害者のための祈りと償いの日」の共同祈願例文と、教皇庁児童を守るための委員会が作成した「性的虐待被害者のための祈り」(新潟教区訳)も掲載されている。共同祈願例文では、▽被害者の痛みに寄り添い共に癒やしの道を歩めるよう、▽加害者が過ちを認め謝罪できるよう、▽聖職者が本来の使命を全うできるよう、▽弱者を守り福音を告げる使命を全うできるよう求める祈りが示されている。