ミャンマー西部のチン州で18日、国軍に火を放たれた信徒宅の消火活動に向かおうとしていたバプテスト派の青年牧師が射殺される事件があった。
この牧師は、複数のソーシャルメディアの投稿により、タントラン・センテナリー・バプテスト教会のクン・ビアク・ハム牧師(31)だと判明。自身のフェイスブック(英語)の情報によると、既婚者で2人の息子がおり、ヤンゴン大学で神学修士号の取得を目指していた。
国連のミャンマー人権特別報告者であるトム・アンドリュース氏は19日、ツイッター(英語)でクン・ビアク・ハム牧師の事件を取り上げ、2月に発生したクーデター以降、ミャンマー市民が経験している「生き地獄」に対し、国際社会はより関心を向けるべきだとし、次のようにつづった。
「バプテスト派の牧師が殺害され、チン州のタントランで民家が爆破されたことは、ミャンマーの人々に対して国軍が日々行っている生き地獄の最新の例です。世界は細心の注意を払う必要があります。さらに重要なことは、世界は行動を起こす必要があるということです」
126の国と地域に住むバプテスト派信者4900万人を代表する国際組織である「世界バプテスト連盟」(BWA)は20日、声明(英語)を発表。クン・ビアク・ハム牧師の不穏な死の内容を強調するとともに、現在拘束されているもう一人のバプテスト派の牧師であるティアン・リアン・サン牧師の即時解放を求めた。
「9月18日に19軒以上の民家が軍部によって焼かれました。バプテスト派の牧師であるクン・ビアク・ハム牧師は、そのうちの1軒が自分の教会のメンバーのものであったため、助けようとしました。しかし、彼は現場に到着するやいなや、兵士に銃撃され殺害されました。彼は現在進行中の紛争によって亡くなった最初のバプテスト派の牧師です。また、兵士たちは彼の携帯電話や時計を盗み、結婚指輪を盗むために彼の指を切断しました。私たちは、ティアン・リアン・サン牧師の即時解放を求めます。また、クン・ビアク・ハム牧師を殺害した者が法的責任を負うことを要求します」
ミャンマーでは昨年11月に行われた総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が83パーセントの議席を獲得して圧勝した。この総選挙の結果に基づいた最初の国会が開かれる予定だった今年2月1日にクーデターが発生。国軍は不正があったとして選挙結果を受け入れず、NLDの指導者をはじめ、アウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領、閣僚、複数の地域の首長、野党政治家、作家、活動家などを拘束した。
クーデター発生後、ミャンマーでは街頭での抗議活動や市民的不服従運動が拡大。国軍による暴力的な弾圧が行われるようになり、人権団体「ビルマ政治囚支援協会」の最新の報告(英語)によると、28日時点で少なくとも1139人が殺害された。また、逮捕者は累計で8550人に上り、このうち6891人が現在も勾留されている。すでに判決を言い渡されたのは293人で、うち26人は死刑を宣告された。さらに死刑判決を受けた26人のうち2人は未成年だという。