ミャンマー東部カヤー州のカトリック教会に24日未明、国軍が砲撃を行い、4人が死亡、8人近くが負傷した。教会も大きな被害を受けており、ヤンゴン大司教のチャールズ・マウン・ボ枢機卿は「大きな人道的悲劇」だとし、「この戦争を激化させないでください」と求める緊急声明を発表した。
ミャンマーの民主派勢力「挙国一致政府」(NUG)の国際協力省(MOIC)の発表(英語)によると、同州カヤンタヤルにあるカトリック教会が24日午前1時ごろ、国軍による砲撃を受け、4人が死亡、8人近くが負傷した。教会には攻撃を逃れてきた老人や子どもらが避難していたという。
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、砲撃を受けたのは同州の州都ロイコーに近いカヤンタヤル小教区の「聖心教会」。教会には週末にかけ、少なくとも60家族300人以上が、国軍とNUGの独自部隊「国民防衛隊」(PDF)による戦闘を逃れるため避難していた。
死傷者はすべてカトリック信者。ロイコー教区の広報担当者であるソエ・ナイン神父がUCAN通信に語ったところによると、教会関係者が24日朝に被害を確認した際には、教会に避難していた人々は全員他の場所へ逃げていたという。ナイン神父によると、ミャンマーでは何千人もの人々が安全だと考え、教会や修道院などに避難している。
この攻撃を受け、ミャンマーカトリック司教協議会会長でもあるボ枢機卿は緊急声明を発表。カトリック東京大司教区による声明の日本語訳によると、ボ枢機卿は「聖心教会に避難していた罪のない民間人が襲撃されたことに対し、私たちは計り知れない悲しみと痛みを感じています」と表明。「彼らの中には多くの子どもや老人が含まれ、飢えを強いられ、医療支援も受けられずにいます。これは大きな人道的悲劇です」と訴えた。
ボ枢機卿はまた、教会や病院、学校はハーグ陸戦条約によって紛争時でも保護対象になっていると指摘。教会に避難していた人々は武装もしておらず、家族を守るためだけに教会内にいたとし、「この国のすべての心が、罪のない人々の死に涙しています」と述べた。その上で「この惨状は止めなければなりません。関連団体の皆様にお願いします。この戦争を激化させないでください」と求め、「今起こっている紛争は残酷な異常事態です。平和は可能です。平和こそ唯一の道です。私たちは、政治家としてではなく、宗教指導者として、この緊急声明を発しています」と伝えた。
一方、同省の発表(英語)によると、国軍は22日夜には、最大都市ヤンゴンのインセイン郡区にあるカレン族のバプテスト教会を襲撃。教会の設備を破壊した上で教会内を荒らし回り、牧師と男性2人を殴るなどしたという。殴られた男性2人のうち1人は障がい者だったと伝えられている。同省は、国軍が国中で宗教的・民族的少数派に弾圧を加えているとし、これらの襲撃はキリスト教徒や教会に対する一連の攻撃の一環だと伝えている。