涌谷(わくや)保育園(宮城県涌谷町)の職員が当時園長だった瀧澤雅洋氏からパワーハラスメントを受けたとして集団退職した問題で、瀧澤氏と同園の設立母体である日本基督教団涌谷教会が、瀧澤氏の解任や牧師館からの退去などをめぐって仙台地裁で争っている。
瀧澤氏は、パワハラ問題などを理由に同教会の牧師と代表役員を解任されたが、手続きに問題があったとして無効だと主張。同教会に対し、自身が現在も代表役員の地位にあることを認め、報酬を支払うよう求めている。一方、同教会は瀧澤氏に対し、解任後も占有している牧師館を明け渡し、賃料相当の損害金などを支払うよう求めている。
仙台地裁はこのほど、中間判決(7日付)を出し、▽瀧澤氏不在で開催された臨時教会総会における解任決議の有効性、▽瀧澤氏の代表役員としての地位の有無、▽解任後の瀧澤氏に対する報酬の支払い義務などを争う瀧澤氏の訴えに関して、「法律上の争訟」に当たるとした。教会側は、信仰の導き手を規律によって決定するのは宗教団体であり裁判所が判断できるものではないとして、瀧澤氏の訴え自体を棄却するよう求めていた。
中間判決によると、瀧澤氏は2015年4月、同教会の主任担任教師(牧師)に就任するとともに、宗教法人の代表役員に就任。また、同教会が設立した涌谷保育園を運営する社会福祉法人涌谷みぎわ会の理事長にも就任した。しかし、同園の職員に対するパワハラを継続して行っていることや、涌谷みぎわ会の理事会において同教会と関係の深い理事を解任し、自身の関係者を理事に選任したことなどを理由に、19年10月の臨時教会総会で主任担任教師解任が決議された。教区総会議長もこれを承認し、翌20年1月には教団総会議長も同意したことで、宗教法人の代表役員からも解任された。
滝澤氏は、臨時教会総会の開催を決議した19年9月の臨時役員会は、招集手続きがなく、議長であった瀧澤氏不在で開催されており、手続違反であったと主張。また、解任理由として挙げられたパワハラと理事解任などは、事実でないか解任理由として不合理であるとしている。
その上で瀧澤氏は同教会に対し、自身の代表役員としての地位を確認し、報酬として44万円および、20年3月から本訴訟の判決確定日まで毎月11万円を支払うよう要求。これに対し同教会は、解任後も瀧澤氏が占有し居住する牧師館から退去し、損害賠償18万円と20年5月から退去日まで賃料相当損害金1カ月6万円を支払うよう求めている。
中間判決は、瀧澤氏の訴えが「法律上の訴訟」に当たるかどうかに限って判断したもので、瀧澤氏の代表役員としての地位や報酬の支払い義務などについては今後審理が行われることになる。中間判決が言い渡された7日は、日本基督教団の石橋秀雄総会議長や秋山徹総幹事も傍聴に訪れていたという。