日本基督教団涌谷(わくや)教会(宮城県涌谷町)が設立した「涌谷保育園」の元職員らが、教会の元牧師で元園長の瀧澤雅洋氏によるパワーハラスメントを訴えている問題で、宮城労働局が瀧澤氏によるパワハラを認定していたことが、元職員による情報公開請求で明らかになった。21日には、日本基督教団総会議長の石橋秀雄牧師が涌谷町を訪問。元職員らによると、石橋氏は元職員や保護者らから事情を聞いた上で、「解決に向けて全力を尽くす」と語ったという。
この問題では昨年、瀧澤氏によるパワハラを理由に園の職員17人が一斉退職。今年1月には、このうち12人が、園を運営し瀧澤氏が理事長を務める社会福祉法人涌谷みぎわ会に対し、計2640万円の損害賠償を求める労働審判を仙台地裁に申し立てた。
涌谷みぎわ会は、元職員らの退職理由について「一身上の都合による」と労働局に報告。しかし元職員らが、瀧澤氏のパワハラにより退職せざるを得なかったとして異議を申し立てたところ、会社都合の退職と同様の条件で失業給付を受けられる「特定受給資格」を得ることができた。
元職員による情報公開請求で労働局が開示した「涌谷保育園離職者の離職理由の考え方」によると、▽涌谷保育園労働組合から瀧澤氏のパワハラに関する陳情があり、法令違反とする被害申告が行われたこと、▽去年3月にパワハラを理由に多くの保育士が退職届を提出した際、瀧澤氏は園長を退くことで引きとめを図っており、責任を認めていると考えられること、▽パワハラ被害を伝える新聞報道などから特定受給資格者と判定したという。また、瀧澤氏のパワハラに関しては、厚生労働省の「雇用保険に関する業務取扱要領」50305番に記載されている「事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けた」例に該当するとした。
元職員らは、石橋氏にこの労働局の見解を提示。石橋氏は元職員や保護者らの訴えに耳を傾け、メモを取りながら何度も深いため息をついたという。話し合いに参加した元職員らによると、石橋氏は「教団の牧師が大変な迷惑をかけて申し訳ない」「パワハラなど決してあってはならない」などと語ったという。また、元職員や保護者らとの話し合いの前に面談した瀧澤氏については、保身的な姿勢に終始していたとし、「残念な結果だった」と述べたという。