イスラム教からキリスト教に改宗し、ロンドン市内の公園で定期的にイスラム教を批判する演説を行っていた女性伝道者が25日、演説中に刺される事件があった。女性は軽傷で命に別状はなく、事件後、自身の心境を語った。
刺されたのは、ハトゥン・タッシュさん(39)。フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」のTシャツを着て25日午後、ロンドンのハイドパーク内にある演説広場「スピーカーズコーナー」で演説していた際に黒い服を着た男に何度も刺された。
「ディフェンド・クライスト・クリティーク・イスラム(DCCI)ミニストリーズ」(DCCIは「キリストを擁護しイスラム教を批評する」の意)を主宰するタッシュさんは、スピーカーズコーナーの常連で、イスラム教の聖典「コーラン」についてよく討論していた。
タッシュさんは、この襲撃で顔と手を負傷した。警察は目撃情報を集めているが、テロとの関連はないとみている。タッシュさんは襲撃を受け「焦り動揺した」と話している。
「私は何か悪いことでもしたのかと自問しています。法律に違反もしていないし、憎しみをあおったこともないと確信しています」
「私はイスラム教に疑問を持っていただけで、討論したり、議論したり、イエス・キリストについて人々に伝えたいと思っていました」
「スピーカーズコーナーはこのような活動を行うのに最適な場所であり、言論の自由の本拠地でこのようなことが起こってしまったのは残念です」
「映像を見ると、(男は)明らかに私を殺そうとしています」
「白昼堂々、スピーカーズコーナーでこんなことが起こるなんて信じられません。英国でこのようなことが起こるとは思っていませんでした」
タッシュさんは「警察の不作為」も非難。「過去において警察は、私を威嚇したり脅迫したりする人々に対処するよりも、私を排除する方が簡単だと考えていました」と語った。
タッシュさんがスピーカーズコーナーで襲撃されたのは今回が初めてではない。これまでも、殺害予告を受けたり、イスラム教徒の男性に平手打ちされたり、殴られたり、地面にたたきつけられたりしたことがあった。
タッシュさんは、暴行、誤認逮捕、誤認勾留、嫌がらせを受けたとして、ロンドン警視庁に対し法的措置を取っている最中だった。タッシュさんの弁護を担当しているキリスト教法律センター(CLC)は、警察にはタッシュさんを保護するための「度重なる失敗」があったと主張している。
CLCのアンドレア・ウィリアムズ最高責任者(CEO)は、タッシュさんが刺されたのは痛ましい事件だったとし、「シャリア法(イスラム法)が裏口から実行されており、25日の事件はこれまでの一連の問題に続く深刻な事態です」と述べた。
「スピーカーズコーナーは、世界でも類を見ない自由を体現した場所です。私たちの自由は糸でつるされています。タッシュさんがスピーカーズコーナーで受けた暴力のために沈黙したら、私たち全員が沈黙することになります」