神奈川県鎌倉市内の神道、仏教、キリスト教の3宗教合同による「東日本大震災追悼・復興祈願祭」が11日、同市の鶴岡八幡宮で行われた。震災発生の翌月に第1回を開催して以降、3宗教が持ち回りで会場を提供し合い、毎年3月11日に行ってきた。震災から10年となった今年は11回目の開催で、キリスト教関係者を含め宗教者約70人が参加。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加は関係者や報道陣のみに限定したが、模様をインターネットで生配信するなどした。
地震発生時刻の午後2時46分には参加者全員で1分間黙祷。その後、3宗教がそれぞれの祈りをささげた。「キリスト教の祈り」には、カトリック教会、日本聖公会、日本基督教団から4人の司祭・牧師が参加。カトリック雪ノ下教会の古川勉主任司祭による進行のもと、旧約聖書のヨブ記19章25~27節、新約聖書のコリントの信徒への手紙二4章10~14節を朗読し、日本基督教団大船教会の松下道成牧師が震災10年を迎えての祈りをささげた。
松下牧師は祈りの中で、死者1万5899人、行方不明者2529人、関連死者3739人、避難者4万1241人など、震災の犠牲者・被災者を示す具体的な数字に言及。「この10年を分かったように語ることはできません。『傷を癒やすには十分な年月です』、そのように誰が言えるでしょうか」と、10年たった今も多くの人々が苦しみ続けていることに心を向けた。
その一方で、さまざまな試練、困難が実存する世界であっても、神がその初めから愛し、肯定し続けている世界でもあると指摘。人間の望みや思いを超えた、深く慈しみにあふれた世界があることを知らされると語った。その上で、死からよみがえったイエス・キリストの復活の希望を強調。「悲しみは悲しみで終わらない」「死は確かに主のいのちにのみ込まれた」とし、「共に祈ることが、私たちを一つに結び合わせてくれる」「希望を失ってしまった人々の心に、祈りを通してあなたの愛と希望が確かに注がれる」と伝えた。
その後、古川司祭が「主の祈り」を唱え、日本聖公会鎌倉聖ミカエル教会の北澤洋(ひろし)司祭が「結びの祈り」をささげた。北澤司祭は、被災者らに神の励ましと導きがあるよう願うとともに、「私たちが常に、これらの人々のことを心に留め、主が示された愛の御姿を持って、彼らと共に歩んでいくことができますように」と祈った。
例年は「アメイジング・グレイス」や「いつくしみふかき」などの賛美歌を、他の宗教者も含め参加者全員で斉唱するが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため歌われなかった。
今年の会場となった鶴岡八幡宮は、震災発生1カ月後の2011年4月11日に開催された第1回以降、会場となるのはこれが5回目。キリスト教では、カトリック雪ノ下教会が過去3回、会場として用いられている。
主催する鎌倉宗教者会議によると、東日本大震災の追悼・復興を祈り求める祈願祭は、震災10年となった今年の開催で「一つの区切り」にするという。しかし、東日本大震災以外にも自然災害や新型コロナウイルスなど、さまざまな状況により苦しむ人々が多くいるとし、今後は3月11日を被災地だけでなく、その他の自然災害に苦しむ人々にも心を寄せ、祈る日としていく計画だという。