2018年2月19日、ナイジェリア北部ヨベ州ダプチの科学技術教育学校から109人の女生徒と共に誘拐され、ボコ・ハラムの囚われの身となってしまったキリスト者の少女レア・シャリブ姉妹の事件から、早くも3年の歳月が流れる。
この祈祷課題では彼女のことを幾度も取り上げた。もちろんレア姉妹の殺害情報などは聞こえてこないが、いまだに行方不明の状態が続いている。きっと彼女はどこかでボコ・ハラムのもと囚われの生活を送っていることだろう。
レアは3年前の2月19日夜、ナイジェリアのダプチにある政府科学技術教育学校から、109人の少女と共にボコ・ハラムによって誘拐された。そのうち5人は移動中のトラックの車中で死亡してしまった。
当時から、ボコ・ハラムによる学生誘拐事件は国際世論の非難の的となっており、ナイジェリア政府や国際世論の強い圧力もあって、1カ月後の3月24日には104人の少女らが解放された。ところが当時14歳で、キリスト教徒のレアは、自身の信仰を棄ててムスリムに改宗することを拒んだため、彼女ひとりが残されてしまった。
解放された学友によると、全員が解放されたあの日、レアもすべての少女と一緒に解放されるはずだった。ところがボコ・ハラムは、レアがトラックに乗る直前、キリスト教徒からムスリムに改宗するための幾つかの儀式的宣言をするように彼女に要求した。しかしレアは「私はイスラム教徒ではないので、決してそれは言えません」と拒んだのだ。
彼らは怒って「お前がキリストを冒とくしないなら、我々と共に残ってもらおう!」と脅したが、なおも彼女はその要求を拒否した。他の学友らも――おそらくは一時的なポーズだけでも――レアに改宗するよう促したが、このわずか14歳の少女は、決して主を否んで裏切ることはしなかったのだ。
彼女は、自分だけが解放されないことを悟ると急いで母親への手紙を書き、それを解放される友人の手に託した。その時の手紙の内容を要約すると次のようになる。
「お母さん、どうか私のことで心配しないでください。お母さんは、私がいなくなって、とてもつらい思いをしていると思うけれど、どこにいても私はきっと大丈夫だと伝えたくて、急いでこの手紙を書きました。私の神様は、このような試みの中でもずっとご自身を現してくださっています。お母さんが朝のデボーションで『神様は苦しんでいる人々により近く寄り添ってくださる』と教えてくれた言葉の通りです。私は今、それが真実だと証明することができます。いつの日か、きっとお母さんに再会できると信じています。私は今お母さんのそばにいなくても、主なるイエス・キリストの内にいます」
レアの学友らは走り出すトラックから、ひとり残された彼女が見えなくなるまで見つめ、泣きながらいつまでも手を振っていたという。
昨年7月、レアはボコ・ハラムの司令官と結婚させられ子どもをもうけたとのうわさが流れたが、真相は定かではない。
ナイジェリア・ガーディアン紙は、2018年の「マン・オブ・ザ・イヤー」を「レア・シャリブ」に決定した。また、昨年の「マン・オブ・ザ・イヤー」には、横暴な警察権力に立ち向かう民衆抗議団体「EndSARS」が選出された。同紙は年末の記事で「EndSARS」と共にレア・シャリブ姉妹を取り上げ、彼女を暴力テロに屈しない「抵抗のシンボル」として描いた。「EndSARS」運動には若者を中心にSNS上で2800万人以上が賛同しており、なんとレアの解放要求も彼らの中で強く共有されているのだ。
今年1月15日にはナイジェリア西部で、礼拝を終えて帰宅する途中のカトリック神父が武装組織に誘拐され、2日後に惨殺遺体で発見された。18日には、キリスト者の大学教授が過激派のフラニ族によって誘拐されたが、これはすぐに解放された。
昨年12月11日には、ナイジェリア北西部のカティナ州カンカラ村にある政府科学中等学校が武装したボコ・ハラム戦闘員に襲われ、330人以上の男子生徒が誘拐されたが、これに対し政府は迅速に行動し、すぐに軍を出動させたため、およそ1週間で生徒は解放され、事なきを得た。
これに対して、ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)のスーポ・アヨクンレ会長は「レアと残りのチボクの女子生徒たち(2014年の276人女生徒誘拐事件、今も100人以上が行方不明)を監禁から解放するという政府の道義的責任はまだ残っている」とコメントした。ラゴスのアデワレ大司教は、新年のメッセージでレアの解放をバフリ大統領に強く求めた。
昨今、ボコ・ハラムやイスラム過激派のフラニ族らの度を越した暴力テロに対しては、ナイジェリア国民全体の怒りの機運が高まっている。3年たつ今、レア姉妹のための祈りと想いは、風化するどころか、解放を待ち望む人々の間で強力に増幅して共有されている。米国ではレア財団が設立され、物心両面でレア姉妹解放のための労力が惜しまずささげられている。レア姉妹解放のための祈りは、ナイジェリアのみならず世界中でささげられているのだ。
人命尊重、人命尊重と連呼される昨今、あの14歳の少女は「人の人生には命よりも大切なものがある」ことを強烈に投げ掛けてやめない。我々もまた、ナイジェリアのリバイバルと共に、望みを持って、レア姉妹がまた彼女のお母さんと毎日のデボーションを行うことができる日が取り戻されるように、継続して祈ろうではないか。
■ ナイジェリアの宗教人口
イスラム 45・1%
プロテスタント 37・1%
カトリック 12・1%
英国教会 22・6%
土着の宗教 3・3%