香港民主主義の危機に歯止めがかからない。米国の大統領選挙の混乱に乗じて、中国共産党は、香港の中国化を進めている。
11月11日、中国政府は、香港独立派議員を失脚させる方針を明らかにした。その直後、香港政府によって民主派議員4人の資格が剥奪された。これに怒った残りの民主派議員15人全員が辞職によって抗議を表した。
中国政府からは、香港教育機関に対して「愛国教育」の徹底が通達された。その意味するところは、中国共産党への忠誠心を徹底的に叩き込めということだ。
世界中からの非難が浴びせられた、国家安全維持法が6月に施行されて以来、抵抗の最後の砦であった民主派議員がいなくなり、香港の自由は著しく失われている。
また、11月23日には、香港民主化団体デモシストの中心的な人物のジョシュア・ウォン(24)、アグネス・チョウ(24)、アイバン・ラム(26)らの保釈が認められず、12月2日には判決が下り、それぞれ禁錮13カ月、10カ月、7カ月の実刑が言い渡され収監された。
ジョシュア・ウォンは両親共にルーテル派の信者であり、幼い頃から教会生活を送ってきたキリスト者だ。彼が民主化運動に加わったのは、2014年の雨傘革命からであり、当時は17歳の高校生だった。
1999年まで英国領だった香港では、キリスト教会が社会に深く根を下ろしており、雨傘革命当時から、目立たないながら重要な役割を果たしてきた。民主化を推進する主な抗議グループの発起人には少なくとも3人のキリスト教徒がおり、そうしたグループの中の一つの発起人は聖職者であった。教会はこれらの活動に宿泊場所や食事などを提供して支援した。
また運動の参加者の中にもキリスト者が少なくなく、デモ集会では賛美歌が歌われ、祈りがささげられ、聖書の一節が読まれることも珍しくなかった。
このように香港の教会は、民主派の活動を物心面でサポートしてきた側面がある。そのため、中国共産党は、本土でもそうだが、特にキリスト教会に対して警戒心と敵対心を隠そうとしない。
ジョシュア・ウォンは、11月にドイツのメディアに手紙を書き、ローマ人への手紙5章3〜4節を引用し、この聖句が彼に力を与えるのだと語った。彼は「種が一度蒔(ま)かれるなら、いつの日か必ず芽が出ます。私たちは決して屈服しません。戦いを続けます」と付け加えた。
収監されるときには、弁護士を通じて次のように伝えた。「戦いは終わっていません。私たちは今、多くの勇敢な抗議者たちと共に、刑務所での戦いに参加します。香港の民主主義と自由のための戦いは続行されなければいけません」
香港の自由と民主主義のために、特にその戦いに参加するキリスト者のために、彼らのキリストにある歩みのうちに、多くの人々に救いがもたらされるように祈っていただきたい。
■ 香港の宗教人口
儒教 59・6%
プロテスタント 7・0%
カトリック 4・5%
イスラム 1・2%
仏教 0・4%
ヒンズー 0・5%