米カリフォルニア州のメガチャーチの元牧師で、ベストセラー本『クレイジーラブ』の著者として知られるフランシス・チャン氏(53)が最近、教会出席者数などの教勢に対する「執着」が、現在の米教会の分裂につながっていると警鐘を鳴らし、一致と愛に立ち返るよう促した。
「私たちは米国にいたとき、重大な過ちを幾つか犯しました。その過ちが、教会を現在のような状態にしてしまったと私は本当に信じています。分裂があまりにも激しく、米国の福音派の評判はこれまでになく悪化しています」。今年2月に香港に移住したチャン氏は、10月27日にZOOM(ズーム)で行われたオンライン会議(英語)で、参加した世界の教会指導者ら約150人にそう語った。
「つまり、皆さんがその(福音派という)言葉を口にしただけで、(人々が)ドン引きしてしまいます。それはもうただ、関わりたくない政治的な集団か何かというイメージなのです。これほど(状況が)悪化したことはかつてありませんでした」
チャン氏によると、米国の教会が犯している「最大の過ち」は「教会出席者数に執着している」ことだという。
「私たちはパニックになり、『できるだけ多くの人を連れて来るために、できる限りのことをしなければならない』と考えました。私たちは合理化するのです。『大勢の人が来続ける方が、まったく来ないよりもましだ』と」
「聖書のどこにそんなことが書かれているでしょうか」とチャン氏は問い掛けた。「そんなことはイエス様の教えではありません」
「イエス様なら何千人であろうと集めることができたでしょう。福音や忠実さを水で薄めさえすれば、それですんだのです。しかし、主はそうされませんでした」
教会が主題にすべきことは人間関係であり、互いに愛し合い、共に祈り、互いを気遣うことだとチャン氏は強調した。
「私たちは忠実に祈らなければなりません。祈りが聞かれることを信じ、互いの愛を信じなければならないのです。他のやり方の方が、もっと効果的に見えることは分かっています。私だったら、論理的にこう考えるでしょう。『まさか神様は、こんなやり方を私に求めておられないだろう』と。しかし、神様の働き方はそうではないのです」
チャン氏は今年2月、家族と共に香港の深水埗(しんすいほ)地区に移住した。オンライン会議では集まった牧師たちに、「互いに愛し合う」という考えは、香港の多くのクリスチャンにとってなじみの薄いものだと語った。チャン氏によると、香港は非常に「欧米化」されているため、家族関係でさえ「奇妙」で「よそよそしい」という。
「それ(香港の家族関係)はヘリコプターペアレント(子どもを上から見下ろす親)の最たるものです。親は成績だけを気にするか、まったく関心を持たないかのどちらかで、『子どもの面倒は使用人に見させる。つまり、子育ては使用人任せ』なのです」とチャン氏は言う。「彼らは何かを成し遂げることにはたけていますが、(彼らにとって)人間関係はそのようななじみのないものです」
「彼らにとっては、牧師を自宅に招くことさえ奇妙なのです」とチャン氏は語り、教会内の「愛」と「一致」の重要性を強調した。
チャン氏は最近、米宣教団体「ゴスペル・フォー・アジア」(GFA)の動画討論会(英語)にも参加した。ここでは「キリストの御体(教会)には、なぜこれほど多くの分裂があるのか。私たちにできることは何か」をテーマに、GFAの指導者で執筆家のK・P・ヨハナン氏と、「バイブル・アンサーマン」として知られるハンク・ハネグラフ氏と共に話し合った。
この中でチャン氏は、今日における教会内の争いや不和が「神の家族」を引き裂いていると警鐘を鳴らした。特に、ブログなどオンラインで仲間であるはずのクリスチャンを攻撃することを懸念するとともに、救いとは無関係な問題をめぐる教会の分裂を憂慮した。「神の家族は混乱状態にあるようです。(このような家族に)加わりたいと思う人がいるでしょうか」
また、「カリスマ的な有名人」や「人気コンテスト」に意識が向き過ぎているとして、現在のキリスト教界を批判した。
「キリストを愛する人々、つまり、真の教会は誤解されているのです」とチャン氏は言う。「私たち全員に言えることですが、私たちが知っていることは一部にすぎませんし、鏡でぼんやりと見ているようなものです。では、どうすれば『完全に一つ』になれるのでしょうか」
チャン氏は、米国の教会は「一致」を求めずに「互いをののしり合い」「戦闘状態」に陥っているとし、「愛に立ち返る」ように促した。「聖書を見ると、キリストが私たちにご自身と一体になることを望んでおられることが分かります。主と完全に一体となり、信じる者同士が完全に一体となることをです」