熱心なカトリック信者として報道されていた前米副大統領のジョー・バイデン氏が11月26日、収穫感謝祭のスピーチ(英語)で聖書を引用する際、詩編に関わる単語の発音を2度にわたって間違えたことで、ソーシャルメディア上で「炎上」状態となった。保守派キリスト者からは、バイデン氏が有名な聖書の書名を知らなかったのではないかと疑う声も上がっている。
2016年の米大統領選では、当時大統領候補だったドナルド・トランプ氏が聖書の書名を読み間違えたとして批判されたことがあり、民主党寄りの主要メディアは執拗に批判的な報道をしていた。しかし、これらの主要メディアは今回、バイデン氏の間違いについてはまったく報じておらず、ダブルスタンダードだと批判する声が出ている。
「詩編記者」ではなく「手相占い師」?
バイデン氏が発音を間違えたのは、旧約聖書の詩編(Psalm)の執筆者を意味する Psalmist という単語。このうち「P」は無音となり、Psalm は「サーム」、Psalmist は「サーミスト」と発音するが、バイデン氏は「S」を無音とし、2度にわたって「パーミスト」と発音した。また「パーミスト」と発音した場合、手相占い師を意味する Palmist となってしまい、聖書は占いを禁止していることから、さらに大きな間違いになってしまう。
この間違いについて、保守系メディア「ニュースマックス」の司会者ハウイー・カー氏はツイッター(英語)に、「『熱心なカトリック信者』であるジョー・バイデン氏は、サーミストの黙字は『S』ではなく『P』であることをご存じでない」と投稿。この投稿は、引用ツイートも含め1万回以上もリツイートされた。
ヒューストン・バプテスト大学で新約聖書学を教えるロバート・A・J・ギャニオン教授も、この間違いをツイッター(英語)で指摘。キリスト教テレビ番組「ライフ・トゥデイ」の司会者ジェームス・ロビンソン氏はツイッター(英語)で、「1回ならミスです。私たちは皆、ミスをすることはあるでしょう。2回はどうしようもない。自分が何について話しているのか知らないという意味になります」と語った。
カトリック・ヘラルドのダミアン・トンプソン編集長はツイッター(英語)で、「これは宗教的な無知ではないのです。彼は全生涯にわたってミサに通っているのです。この哀れな男性は認知症なのです」と皮肉を交えてコメントした。バイデン氏はカトリック信者ではあるが、カトリック教会が反対している人工妊娠中絶の権利を推進する立場にあることから、カトリック教会内でも否定的な見方をする人は一定数いる。
福音派のクリスチャニティー・トゥデイが発行する牧師向け雑誌「リーダーシップ・ジャーナル」の編集者であるドリュー・ディック氏はツイッター(英語)で、「これが彼にとっての『第2コリント』の瞬間だ」と述べた。
トランプ氏の「第2コリント」は英国式の読み
「第2コリント」とは、新約聖書の「コリント信徒への手紙二」のこと。トランプ氏は2016年の米大統領選時、福音派のリバティー大学で講演した際、米国で一般的な読み方である「Second Corinthians」ではなく「Two Corinthians」と語ったことで、学生たちの失笑を買い、これを、CNNやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ(いずれも英語)などの主要メディアが嘲笑的に取り上げた。しかし、英国などでは「Two Corinthians」と読むこともあり、さらにトランプ氏はスコットランド人の母を持つことから、母親譲りの読み方をした可能性もある。
そうしたことから、オクラホマ・ウェスレアン大学のエベレット・パイパー元学長はツイッター(英語)で、「(バイデン氏は)唖然(あぜん)とするほど無知だ。なおかつ主要メディアは執拗に第2コリントのことでトランプ氏を笑い者にした。英国や他の国ではそのように読むにもかかわらずだ」と批判した。
また、ウェストミンスター神学校カリフォルニア校のスコット・クラーク教授はツイッター(英語)で、「トランプ氏は英国式に第2コリントを発音しただけで殺されるような勢いだった。彼の母親はスコットランド人だ。大勢の米国人がまるで英語ではそのような言い方はないかのように早とちりしてしまった。米国の外では広くその言い方がなされているというのに」と述べ、バイデン氏に関しては「パーミスト? 絶対ない。誰も言わない。決して」と切り捨てた。
キリスト者の反応は圧倒的に批判的なものが多かったが、擁護の声もあった。エバーグリーン・フォースクエア教会(ワシントン州)のダグラス・バーシュ牧師はツイッター(英語)で、バイデン氏が同じスピーチの中で聖句を引用し、聖書的な愛について語っていることを挙げ、トランプ、バイデン両氏の失言を誤った等価関係においてはならないと述べた。
トランプ氏とバイデン氏で異なる主要メディア報道姿勢
トランプ氏と対立が際立っていたCNNは2016年当時、「クリントンとトランプ:2つのコンリントにまつわる話」と題した記事(英語)を掲載。当時、トランプ氏と大統領選を争っていたヒラリー・クリントン氏がメソジスト(プロテスタント)であり、選挙演説で訪れたサウスカロライナ州で出会った牧師と対話した際、第1コリント13章7節をそらんじ、牧師を驚かせたことなどを紹介した。その一方で、トランプ氏は第2コリントの読み方も知らない人間として引き合いに出していた。
しかし今回のバイデン氏の間違いについては、CNNをはじめ、民主党寄りの主要メディアは軒並み報じていない。バイデン氏の間違いを取り上げ、こうした主要メディアの報道姿勢を批判したのは、デイリーワイヤーやフェデラリスト(いずれも英語)などの比較的小規模の保守系メディアと、保守地方紙のボストン・ヘラルドなどしかなかった。ボストン・ヘラルドの記事(英語)を執筆したのは、ツイートが大量に拡散したカー氏。カー氏は主要メディアの報道姿勢について「昔からやっているダブルスタンダード」と断じた。
CNNの偏向姿勢裏付ける電話会議
こうした中、12月に入って、CNNの偏向姿勢を裏付ける証拠として、民主党に不利な報道を避ける決定をしている社内電話会議の録音内容をフォックス・ニュースが連日報じ、大きな注目を集めている。これは、CNNの報道姿勢に疑問を持った内部告発者が、保守派ジャーナリストに毎朝9時からの電話会議のアクセス情報を提供し、約2カ月にわたって録音したもので、CNNのジェフ・ザッカー社長らが報道内容について指示する内容が含まれている。
録音によると、ニューヨーク・ポストが独占報道したバイデン氏の息子ハンター・バイデン氏とウクライナや中国とのやりとりに関する疑惑について、CNNは「報道しない自由」を行使することを決めていた。フォックス・ニュース(英語)によると、10月14日の電話会議でCNNのデービッド・シャリアン政治部長は「われわれは明らかに、ハンター・バイデン氏に関して今行われているニューヨーク・ポストの報道とは一緒には行かない」と語っており、CCNはその後、同18日付の記事(英語)で、根拠を示さずこれをロシアの工作員による偽情報だと報じた。しかし、ハンター氏は今月9日、中国との取引で得た巨額の金銭について資金洗浄や税法違反の疑いで、米連邦捜査局(FBI)や米国税庁、米連邦検事から犯罪捜査を受けていることを自ら発表し、CNNは同日付の記事(英語)でやっとハンター氏の問題を報じた。
CCNの電話会議の録音は、ツイッターでは「#CCNTapes」のハッシュタグと共に大量に拡散されており、今後も順次公開されていくという。