11月3日の米大統領選を前に、米国内のクリスチャンに投票を呼び掛ける両陣営からの独占寄稿が、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(CP)に掲載された。民主党のバイデン陣営からはジョー・バイデン候補本人が、共和党のトランプ陣営からはマイク・ペンス副大統領が執筆。以下に、バイデン氏の寄稿(英語)の日本語訳を掲載する(ペンス氏の寄稿の日本語訳はこちら)。
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マタイによる福音書の中で、イエスは「先生、律法の中で、どの掟(おきて)が最も重要でしょうか」と問われました。
イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』 これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』 律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」
これらの不変の原則--神を愛し、人を愛すること--は、私の信仰の根底にあります。公職としてのキャリアを通じて、これらの価値観を、最も重要なこととして、自分の立場を堅持してきました。夫として、父親として、祖父として、これらの価値観が私たちの家族を築く礎となっています。妻、娘、息子を失った苦しみの中で、これらの価値観は永遠の希望を持って私を支えてくれました。私の信仰は、悲しみの時には計り知れない慰めの源となり、あらゆる形での権力の乱用と戦うための日々の励ましとなっています。
カトリックの信仰によって、私は核心的な真理を教えられました。私たちは皆、本来的な価値を持っており、美しく、ユニークに、神の似姿「イマゴ・デイ」として創造されています。それは、私たちの米国の試みの核心にあり、建国の文書に書かれているのと同じ信条です。
国として、私たちは決して完璧ではなかったし、偏見のない国でもありませんでした。私たちは、これらの理想を完全に達成したことはありませんでしたが、決してそれらの理想から離れ去ったわけではありません。そして、最も良く発揮されたときは、これらの価値観が、キング牧師が言ったように、道徳的な宇宙の大きな弧を正義に向かって曲げるように、何度も何度もわれわれを突き動かしてきたのです。大統領として、これらの原則は、私の行動のすべてを形作るものであり、私の信仰は、私の生涯を支えてきたものであり続けるでしょう。
今、この国は多くの危機に直面しています。その中には、イマゴ・デイの理念に対する脅威も含まれています。これを私は「国家の魂の戦い」と呼んでいます。私たちは2017年にシャーロッツビルでそれを見ました。戦場から出て来たような人々の憎悪と沸騰する怒りは、ティキのたいまつ1を担いで、1930年代に聞いたのと同じ反ユダヤ主義的な憎悪を唱えていました。それ以来、私たちはそれを――移民、有色人種のコミュニティー、異なる信仰を持つ人々への攻撃などを――あまりにも頻繁に見てきました。私たちの国で憎しみと分裂をあおる人々から発せられる暴力。近年、私たちの隣人を、神の子や仲間の米国人としてではなく、「他の人」と定義することはあまりにも簡単になっています。それをやめなければなりません。私たちは団結して、隣人を自分たちのように愛するためにもっと努力しなければなりません。それこそが、私たち全員が神に召された働きなのです。
この国の魂の戦いこそが、私が大統領選に立候補する理由であり、皆さんの投票を求める理由です。私たちが何者であるか、何のために戦うのか、そしておそらく最も重要なこととして、どのような国家になりたいのかということが、かかっています。人格は投票用紙に書かれます。わが国の人格です。この国を定義する核心的価値は投票用紙にあります。私は誇り高き民主党員として立候補していますが、すべての米国人のために大統領として奉仕します。
大統領に就任したなら、私は初日から、コロナウイルスのパンデミックに真正面から取り組みます。われわれはまだ峠を越していません。実際、感染症は再び増加しており、1日の感染者は7月以降初めて7万人を超えました。22万人以上の米国人がウイルスで亡くなり、数千万人が失業しています。何百万人もの個人や家族が、このウイルスのために失業しています。彼らは、どうやって食卓に食べ物を並べるか、住宅ローンを支払うか、薬を買うかを心配しています。もし感染したらどうなるのかを恐れています。健康保険を失っているので、感染したらどうなるかを心配しています。そして、あまりにも多くの家族が、愛する人が座っているはずの食卓に、新たに空の椅子があるという毎日の痛みと格闘しています。それは私がよく知っている痛みです。ビデオチャットで最期のお別れを言う痛みは想像を絶しますし、地域の人々と集まって悲しむこともできません。しかし、8カ月たっても、この政権には何の計画もなく、このウイルスを先取りする戦略を実行する意思もありません。
私は別の方法を選択します。私が政権を取ったら断固とした公衆衛生上の対応を主導します。それは、このウイルスを追跡し、その広がりを抑えることができるように無料の検査を強化することです。コロナウイルスの治療にかかる費用の障壁をすべて取り除きます。最前線で働いている人々が安全を保つために必要な個人衛生用品の製造と流通を増やします。そして医療従事者たちがマスクの配布を受けなくてもいいようにします。安全で効果的なワクチンが用意できれば、迅速に公平に配布します。私たちはまた、感染拡大によって影響を受けたすべての人々のための緊急の有給休暇から始まり、この危機によって激しく打撃を受けている労働者、家族、および中小企業に必要な援助を与える経済的な応答を導くでしょう。
コロナウイルスを打ち負かすためには、国をこの危機から救うために皆で協力しなければなりません。私たちは皆、マスクを着用しなければなりません。これは政治的な声明ではなく、隣人を自分自身のように愛するという神の戒めの表れであり、それによって命を救うことができるのです。私が政権を取ったなら、この公衆衛生と経済への対応を動員する際には、民主党と共和党の知事と緊密に協力して、各州がそれぞれの州で効果的な対応を実施するために必要な資源、支援、指導を得られるようにし、全国的にマスク着用を義務付けるようにしていきます。私たち全員が協力すれば、上流階級だけでなく、すべての人のために、人命を救い、経済をより迅速に軌道に戻すことができます。
私たちはまた、イマゴ・デイの考えに反している体系的な人種差別を根絶しなければなりません。これらの不正は長い間、私たちの社会の一部となってきましたが、この大流行は私たち全員が直面していることを明らかにしました。失業の重荷とこの病気への暴露が、歴史的に不利な立場にある地域社会の背中に不釣り合いに降り掛かっていることを、私たちは非常にはっきりと見ています。
ですから私たちはこれらの困難な時代に、最も必要としている人々に、本当の、即時の経済救済を提供しなければならないのです。それは、貸料や食料、失業支援であり、学生ローンの救済であり、営業し続けるのに苦労している中小企業のための支援であり、勇敢な最前線の労働者および救急・消防・警察の給与を支払うための、州および地方自治体に必要な援助であり、そして、彼らが生徒および私たちの教育者の両方を安全に保つために配置されたすべての正しい予防措置および資源で学校を安全に開くための支援です。
牧師であり神学者でもあるディートリッヒ・ボンヘッファーが言ったように、「車輪の下の犠牲者たちを介抱するのみならず、身を投じて車の進行そのものを阻止する」こと。それが大統領としての私の使命です。多くのコミュニティー、特に有色人種のコミュニティーに降りかかっているわが国の不正の歯車を食い止めるための全国的な努力を導くことです。人種の公平性は、私のアジェンダ全体に組み込まれている中核的な原則です。私たちは、経済への完全な参加を妨げる障壁を取り除くために働き、すべての家族がより簡単に、最初の家を購入することを容易にすることを含めて、子どもたちに引き継ぐために富を創造し、構築することができることを保証します。そして私は、出生時に始まる子どもに投資し、子どもの教育機会が住む地域、両親の収入、人種、または障がいによって決定されないことを保証する教育システムを構築することに深く関わっていきます。
私たちはまた、地球上で最も裕福な国であり、あまりにも多くの家族に負担をかけ続けている貧困の広まった悪に取り組まなければなりません。イエスは私たちに、「多く与えられた者は、多く求められる」と教えています。この国は世界最高のGDPと信じられないほどの国の資源に恵まれていますが、あまりにも多くの労働者の家庭が基本的な生活必需品の支払いに苦労している一方で、経済の報酬はますます裕福な少数の人々の手に集中しています。
私の信仰は、貧しい人々のための優遇措置を受け入れることを暗示しており、大統領として、貧困と闘い、私たちを最高の理想に近づける未来を築くために全力を尽くします。
それは、イザヤ書65章に表されている希望をより反映した経済を構築することを意味します。それは、子どもたちが不幸に生まれず、労働者が労働の成果を十分に分かち合い、年老いた人々が老後を過ごす世界です。100万人以上の退役軍人がフードスタンプの世話になり、何百万人もの子どもたちが飢餓から逃れるために学校給食に頼っている中、私が政権を取れば、貧困と経済的不公平が私たち全員を傷つけていることを認識するでしょう。貧困と経済的不公平は、米国が築き上げてきた基本的な価値観を損なっています。
旧約聖書と新約聖書の両方で、私たちは見知らぬ人を歓迎するように教えられています。私は、米国が移民、亡命者、難民に対する思いやり、恵み、愛の場所として再確立することを保証します。
これは、信仰共同体が主導してきた分野であり、私は大統領として、信仰指導者や信仰共同体と緊密に協力して、難民を拒絶するのではなく、難民を歓迎する国としての米国の使命を再確認していきます。私たちは再び、すべての人間の固有の尊厳を守り、自由の恵みを守り、暴力や迫害から逃れてきた人々に避難の場を提供する国にならなければなりません。
私は、安全を守り、法律と価値観の両方を守り、経済を成長させ、強化する政策を追求しながら、すべての人に尊厳をもって接する移民制度を構築することに深く関わっていきます。
上院議員として、私はこの政権が組織的に壊滅させようとしてきた難民プログラムを作成する法案を共同で後援しました。大統領として、私は、民主党政権と共和党政権の両方の下で、歴史的な慣行と道徳的責任に沿って難民受け入れを回復することに尽力します。
私のキャリアを通して、私の仕事は、信仰の指導者、組織、共同体によって形作られてきたものであり、また多くの場合、信仰の指導者、組織、共同体と共に行われてきました。信仰の人々は、正義、平等、平和のために、わが国の最も重要な成果の多くの最前線に立ってきました。私は、このパンデミックによって悪化した本質的な共同体の必要を満たすために彼らが行う重要な仕事を強化し、拡大するために、信徒、信仰に基づく組織、および信仰の指導者との提携に努めていきます。私たちは、クリスチャンとして、奉仕されるのではなく、奉仕するように呼ばれており、バイデン・ハリス政権は、その基礎的な価値を体現します。私たちは人々の奉仕者となり、信仰を持つ人々の貢献を深く評価する、堅固で多様性に富み、包括的な連合を構築するために始めた重要な活動を継続します。
私たちはいつもすべてのことについて同意しなければならないわけではありませんが、私たちの国は、過去4年間、私たちの公共生活の多くを規定してきた分裂の精神と憎悪に満ちた言葉を克服するために、一緒になる方法を見つけなければなりません。
私たちは皆、神の目には重要な存在であり、米国が切実に必要としている癒やしを達成するためには、私たち全員が必要とされます。神の「最も重要な掟」に従うこと、そしてお互いを完全に愛することです。私たちは共に、国の魂のための戦いに勝利し、パンデミックの終焉(しゅうえん)、経済回復の推進、人種差別との対決など、私たちが直面している複数の危機を乗り切り、貧困の惨劇に対処し、すべての人の尊厳を守る移民政策と難民政策を追求し、すべての神の子たちが当然に値する希望と未来を持つことを保証するために、私たちの力ですべてを行うことができます。
クリスチャンとして、私たちを分断するよりも、私たちを団結させるものがあることを私は知っています。また米国人として、私たちが団結して立ち上がったときに、この国が達成できないことは何もないことを知っています。