日本聖公会はこのほど、宣教体制の強化と教区再編を図るため、宣教協働区と伝道教区制を新たに設置することを決めた。これにより、日本聖公会は3つの宣教協働区に分かれる。また、教区は教区会の決議と総会の承認によって教区主教を置かない伝道教区に移行することが可能になった。10月27〜29日開催の第65総会で法憲法規の一部改正案が可決し、10月30日付で施行。主教会が11月20日にメッセージを発表した。
主教会のメッセージによると、背景には1990年ごろから信徒数が伸び悩み、現在では減少傾向にあることへの危機感がある。このような状況を受け止め、2012年9月に開催された宣教協議会では、教会内の牧会はもちろん、教会のある地域全体に対する牧会的働きを「ていねい」に実践し、その地域にある課題と世界にある課題に誠実に取り組むことに日本聖公会の宣教の原点があることをあらためて確認。「ていねいな牧会」が提起され、伝道や宣教の「ていねいな」在り方と取り組みが求められていた。
日本聖公会ではこれまで、北海道から沖縄に至る11の教区が、それぞれの教区主教のもとで自律した共同体として宣教牧会に励んできた。そのため、教区の枠を超えて協働することに困難があったという。宣教協働区は、従来の教区という単位を越えて、区内の諸教区が共に支え合い、共に歩むことを目指している。
そのためには、それぞれの教区の持つ制度的、慣習的違いを分かち合い、理解し合い、より良い方向を目指していくことが必要だ。改正では、各宣教協働区に協働委員会を設け、これらの違いを分かち合い、理解し合うための調整機関とした。協働委員会は、区内で求められる宣教活動や、助けを必要とする部分への牧会活動を具体化するための計画を策定する。また、教区の再編成についても立案、調整する役割を担う。
宣教協働区の名称と区域は次の通り。東日本宣教協働区(北海道教区、東北教区、北関東教区、東京教区)、中日本宣教協働区(横浜教区、中部教区、京都教区、大阪教区)、西日本宣教協働区(神戸教区、九州教区、沖縄教区)。
教区が伝道教区となった場合、教区主教は退任する。首座主教が主教会の同意を得た上で同じ宣教協働区の教区主教の一人に管理を委嘱。管理主教の下で原則5年以内に他の教区と合併するなどの再編を目指す。
主教会はメッセージで、「今回の法規改正は、日本聖公会のこれまでの在り方を大きく変えるもの」と指摘。「新たな枠組みですので、経験したことのない困難な事柄もあるでしょう。そのようなことも共に乗り越え、あるいはこの新しい枠組みをも前進させることを通して、神様から与えられた宣教の業をしっかりと担い直すことができますように主教会一同、心から願っております」と伝えた。
また、宣教協働区と伝道教区制の設置は「私たちの教会が変革されていくための過程」と述べ、「ぜひ、各教区の信徒・教役者の皆様におかれましても、それぞれの状況、文脈に応じた思いやアイデアを出し合っていただき、それらの一つひとつを、2022年に予定されています『日本聖公会・宣教協議会』に持ち寄って、私たち日本聖公会全体で共有できるヴィジョンへと練り上げていければ」とした。