中国はこのほど、国内における外国人の宗教活動を厳しく制限する新しい規制の草案を発表した。専門家らは、この規制により中国における宗教活動がさらに困難になるとみている。
中国司法省は11月18日、意見公募の目的で「中国における外国人の宗教活動管理規定実施細則」の改正草案をホムページ(中国語)で公開した。草案は外国人が中国国内で宗教活動をすることを厳しく制限する内容となっており、特に第21条では、外国人による次の宗教活動を禁止している。
- 中国の宗教団体、宗教学校、宗教活動の場の業務に干渉、または業務を支配し、宗教者の人事決定や管理に干渉すること。
- 宗教団体、宗教事務所、宗教活動の場、宗教学校の設立。
- 宗教的過激主義を促進し、宗教的過激主義および違法な宗教的活動を支援および資金提供し、宗教を利用して中国の国家統一、民族統一を弱体化させ、テロ活動を行うこと。
- 中国国民の間における違法な説教、信者の育成、中国国民からの宗教的寄付の受領。
- 宗教的な教育と訓練の実施。
- 宗教を含むその他の違法行為。
また第9条では、寺院やモスク、教会などで集団的宗教活動を組織することを計画している外国人は、プロテスタントであれば中国基督教三自愛国運動委員会、仏教であれば中国仏教協会のような、政府公認の宗教組織に「書面による申請」を行うことを義務付けている。
この新しい規制は、宗教の「中国化」を繰り返し語っている習近平国家主席の下で進められている宗教弾圧の最も新しい動きとみられる。
中国の宗教弾圧・人権侵害を扱うニュースサイト「ビター・ウィンター」(本部・イタリア)は、草案の英語訳全文を掲載。宗教社会学者であるマッシモ・イントロヴィーニャ編集長は論説(英語)で、草案は中国が「宗教について話をしに来るあらゆる立場の外国人を恐れている」ことを明らかに示していると語った。
イントロヴィーニャ氏は、新規制が施行されれば「聖職者だけでなく他の誰もが、中国を訪れ、礼拝や講演会を行ったり、参加したり、中国の同労者と宗教について話し合ったりするために、さまざまな局や事務所、行政機関から多くの奇妙な数の認可を受けなければならない」と言い、これらの認可を得ることは「非常に困難」だと指摘した。
中国は公には無神論国家であるものの、政府は仏教、道教、イスラム教、カトリック、プロテスタントの5つの宗教に限り認めている。しかしすべての宗教は、中国共産党中央委員会の直属組織である「中国共産党中央統一戦線工作部」の監視下に置かれている。
政府公認の宗教組織の活動は厳しく管理されており、政府非公認のいわゆる「地下の教会」や個人宅などで行われる宗教集会は「違法」とみなされる。こうした「違法」な宗教活動は、日常的に取り締まられ、対象者は罰金を科されるなどし、さらにその場所が共産党のイデオロギーを宣伝するプロパガンダセンターに作り替えられることもあるという。
中国では長年、キリスト教徒だけでなく、イスラム教徒のウイグル族や法輪功学習者、チベット仏教徒など、国内の宗教少数派に対する人権犯罪、さらには大量虐殺に関与していると非難されている。
中国のイスラム教を専門に研究している英ノッティンガム大学の上級研究フェローであるリアン・サム氏は米CNN(英語)に対し、新規制は「外国からの影響に対する(中国の)長年の恐れを反映したものであり、現在の情勢の中でより重要になっています」と語った。
「『中国の宗教的独立』という言葉が繰り返し使われているのが印象的です。これは、宗教を『外国』の影響から浄化したいという国家主義者の願望を指し示しています」とサム氏。「この規制は、中国の宗教実践者を国外の信者から隔離するためのもののように見えます。宗教的な人物を招いて行う講演会さえも、多くの講演者を諦めさせるような官僚的な許可プロセスが必要となるでしょう」と語った。
この草案は一般からの意見を募るために公開されたもので、意見の受付期間は12月17日までの1カ月間。しかし通常は誰かが意見を出したとしても、国家機関が作成した草案が大きく変わることはなく、場合によっては今後さらに内容が悪化することもあり得る、とビター・ウィンターは指摘している。