中国の人権状況を監視するニュースサイト「ビター・ウィンター」によると、中国で宗教に対する取り締まりが続く中、東部・安徽(あんき)省ではこの半年で計900以上の教会から十字架が撤去されたという。
ビター・ウィンター(英語)によると、安徽省は中国で2番目にキリスト教人口が多い省で、今年1~4月には250以上の教会から十字架が撤去された。さらにこのほど、6月までに同省内の別の656教会で十字架が撤去されたことが確認されたという。これら十字架が撤去された教会は、政府が認めていない「家の教会」ではなく、政府公認の三自愛国教会だった。
同省阜陽(ふよう)市潁東(えいとう)区にある三自愛国教会は、4月に十字架を撤去された際、当局から一連の十字架撤去運動は国策の一環だと言われたという。
ある教会関係者は、「教会が十字架の撤去を拒否すれば、信徒は年金や貧困救済補助金などの社会保障を失い、子どもたちの将来の就職の可能性にも影響を受けることになります」と説明する。
同省馬鞍山(あまさん)市含山(がんざん)県では、十字架を撤去した職員から、政府の建物より高いところにある十字架は「政府の建物に影をつくるから取り除かなければならない」と言われたという。教会の信徒はビター・ウィンターに次のように語った。
「一般企業のように見える教会(の建物)だけが合法と考えられています。キリスト教を『中国化』するために、習近平国家主席は教会が西洋の十字架を持つことを許さないのです」
この信徒によると、教会の長老は政府関係者から「十字架の撤去に抗議することは、政府に抗議することを意味する」と警告されたという。「私たちの教会の十字架がすべて取り除かれたことを思うと、非常に悲しいです」と信徒は言い、「十字架は信仰の象徴ですが、中央政府の命令に逆らう勇気のある人がいるでしょうか」と付け加えた。
実際に、十字架の撤去を阻止しようとした信徒が当局によって負傷させられたり、勾留されたりすることは度々起こっている。
馬鞍山市当塗(とうと)県では5月、大型クレーン車3台を使って十字架の撤去が行われた。教会の信徒の話によると、何百人もの警官が「教会を封鎖し、車や歩行者が近寄るのを禁止した上で、鉄製の鎖の錠を切って教会の中に入って行った」という。その際、警官が教会に入るのを阻止しようと前に出た年配の信徒が手を負傷した。
米国に拠点を置くキリスト教の権利擁護団体「対華援助協会(チャイナエイド)」の傅希秋(ボブ・フー)会長は以前、2013年ごろから始まった中国の十字架撤去キャンペーンについて、「中国におけるキリスト教の急速な成長を封じ込めようとする中国政府の決意を示している」と説明していた。
中国政府による宗教や宗教的少数派に対する取り締まりは、米国際宗教自由委員会(USCIRF)や米国務省、その他の国際的な機関も報告している。
USCIRFは2020年の年次報告書で、中国当局が中国全土の教会から十字架を撤去していることに加え、18歳未満の若者が宗教活動に参加することを禁じていると報告。他の複数の報告によると、中国当局は一部の教会に対し、会堂内にあるイエスや聖母マリアの絵画を撤去し、習近平国家主席の肖像画に差し替えるよう要求することも行っている。