コロナ禍の今こそクリスチャンが中心となって共に祈ろうと、第20回日本CBMC国家朝餐祈祷会が17日、京王プラザホテル(東京都新宿区)で開かれた。教団教派を超えて全国から約110人が会場に集まり、初の試みとなったオンラインのライブ配信を通じて韓国や香港、シンガポールなど世界各国のクリスチャンと共に日本と世界の平和のために祈りをささげた。
国家朝餐祈祷会は1930年代に米シアトルで始まり、53年にドワイト・アイゼンハワー大統領(当時)が出席して以降、米国では現職の大統領が毎年欠かさず出席することで知られる祈りの運動。世界各国で広がりを見せ、日本では、世界96カ国にネットワークを持つクリスチャン実業人の集い「日本CBMC」(青木仁志理事長)が2000年から毎年主催している。今年はコロナ禍で中止も検討されたが、こういう時期だからこそ、国家と指導者のために祈ることが重要と考え、信仰に基づいて会を開催することにした。
来賓として自民党の石破茂衆院議員、ヤッファ・ベンアリ駐日イスラエル大使らがあいさつした。4代目のクリスチャンである石破氏は、「至らぬキリスト教徒ではあるが、毎朝毎晩、過ちがあったら正してくださいと祈れることはとても幸せなことだと思っている。神様が絶えざる祈りを聞いてくださって、涙に代えて歌を賜るということがどんなに素晴らしいことか」と話した。ベンアリ氏は、「コロナの感染拡大に対して衛生面ではソーシャルディスタンスが最も重要な解決策だが、霊的な面での解決策は、互いがより近付くために共に過ごすことではないか。皆さんがこうして共に集まり、互いを助け合う精神をしっかりと持ち続けておられることに心から感謝したい」と述べた。
今年のテーマである「キリストの平和を求めて」(コロサイ3:15)を主題に御言葉を取り次いだ細井眞牧師(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団十条キリスト教会)は、「キリストの平和」について「主イエス・キリストの十字架を語らずして、キリストの平和はあり得ません。まさにキリストの福音であると捉えるべき」と説いた。キリストが十字架にかかられたのは「愛するが故」であり「まさに私たちのために身代わりとなってくださり、私たちの罪をぬぐい去ってくださって神の子としてくださった」と強調。「これが、キリストの平和です。このキリストの平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさいと御言葉は語っています」と伝えた。
原文で使われているギリシャ語の言葉から、「心」は人間の知(知性)、情(感情)、意(意志)を包含するもの、また「支配する」は、野球の審判員が選手のプレーを判定するようなニュアンスに近いと説明。「あなたがたにすべてのことを教え、また、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださる」(ヨハネ14:26)とイエスの語った聖霊が共におられることをはっきりと知り、日常生活の中に聖霊を迎えるときに「キリストの平和を私たちに実現してくださる」と語った。
フィリピンで終戦を迎えて捕虜収容所にいた父親が、クリスチャンだった一人のフィリピン兵の親切な行いを通して信仰に導かれたことを証しし、「私たちの行為は小さなものかもしれません。でも、私たちの身近なところから、主は善いことをするようにと命じておられます。聖霊様が私たちと共におられるので、私たちは勇気を持ってその業をしていく者となろうではありませんか」と訴えた。
参加者を代表して、峯野龍弘牧師(ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会)が自然災害とコロナ禍、オメガ・ジャパン創立者の栄子スティーブンス氏がエルサレムの平和、増山浩史牧師(21世紀キリスト教会)が日本のリバイバル、立憲民主党の山川百合子衆院議員が政治、ロングライフホールディングス創業者の遠藤正一氏が経済の祝福、CBMCアジア理事の井上義朗氏がアジアの一致を覚えて祈りをささげた。
峯野氏は、「私たち人間がアダムの原罪以来、その美しい創造秩序を乱し、自己利益の追求のために多くの罪を犯し、自然破壊を引き起こし、もろもろの自然災害を引き起こしてしまいましたことを思い、その取り返しのつかない大罪の故に、そして取り返しのつかないもろもろの災いの故に、主の御前に深く悔い改め、その罪をお詫びいたします。主よ、憐(あわ)れんでください」と祈った。特に東日本大震災の被災者のために祈り、「一日も早くその悲しみを癒やし、平安と喜びに満ちた新しい生活をお与えくださるように。そのために、お互いキリスト者と教会が無策のままで手をこまねいて傍観することの決してないようにしてください」と願った。さらに、コロナ禍を覚え、「特に幼な子、高齢者、そして困窮する助けを要する弱い立場の人々の上に、速やかな救いを、癒やしを、慰めを、恵みを注いでください」と祈るとともに、為政者や研究者をはじめ、終息のために労苦するすべての人々に天からの豊かな知恵と力、人々に寄り添う大きな愛を与えてくださるよう願った。
栄子氏は、コロナの影響で帰国できず米カンザス州からビデオメッセージを寄せた。長年イスラエルのために祈ってきた栄子氏は、日本のクリスチャンは人口比で見ると1パーセントに満たないが、イスラエルのために祈るクリスチャンの割合では世界一だと紹介。イエス・キリストの救いは「とこしなえまで伝えられる最高の愛の恵み」と語り、「どうぞ日本の方々が、この素晴らしい救いを知ることができますように。イスラエルのために一生懸命祈っている日本に、あなたが祝福を降り注いでくださいますように」と熱い祈りをささげた。
増山氏は、「あなたの素晴らしさを、あなたの愛と恵みを、もしも私たちが伝えなかったら、誰が伝えるのでしょうか」と強調し、「今一度、私たち一人一人を、あなたの御言葉を伝えるしもべとして祝福してください」と祈った。また「主よ、どうぞ私を用いてください」と祈り、「あなたのご栄光が、この地上に現されますように。職場の人がそれを見ますように。家庭の中でまだ救われていない家族がそれを見ますように。友達が見ますように。世の中の人が私たちのうちにおられるあなたを見ることができますように」と願った。
山川氏は、「私たち政治家も、正しいこと、最善なことを見極めるのが困難であります。どうぞ、政治に携わる一人一人が、神様の御声を聞いて、神様の御心をなすことができるように導いてください」と祈った。また「分断ではなく、一致をもたらすことができますように。私たち政治に携わる者の心、そして政治全体を、今日のテーマである『キリストの平和』が支配するように導いてください」と願った。
遠藤氏は、「私たちは知恵浅く、力弱い者でありますけれど、荒野を耕し、荒野に種をまく、最善の努力をいたします」と祈り、「あなたの御手によって、雨を降らせ、太陽を当て、私たちにその実りをお与えいただきますように、どうぞ励ましてください」と願った。
井上氏は、「世界では強国が台頭し、特にアジア太平洋地域はその覇権争いの舞台となっています」と語り、「隣人にしてほしいことをして、分け与えよとのあなたの教えにまったく反対の行いをするリーダーに、悔い改めの機会を与え、方向を転換する道を与えてください」と祈った。また「私たちの罪を、気付いていない罪も示して、悔い改めへと導いてください」と祈り、「私たちアジアの民も世界中の民も、共にあなたに生み出された者、共にアブラハムの子孫として、強国を恐れるのではなく、あなたを畏れる思いで一致することができますように」と願った。そして「アジア太平洋地域の国々にあまねく福音を伝えることができますように、われわれを用いてください」と祈りをささげた。
祈祷会では、第20回を記念して日本CBMC歴代理事長の中から、日本キリスト伝道会の米田昭三郎副会長と神戸平和研究所の杣浩二理事長がメッセージを述べたほか、CBMCアジアのアリス・タム会頭がビデオメッセージであいさつを述べた。また、開会祈祷は天野弘昌牧師(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団草加神召キリスト教会)、食前祈祷は日本基督教団総会議長の石橋秀雄牧師、閉会祈祷は東京キリスト教学園理事長の廣瀬薫牧師がささげた。音楽ゲストには、クリスチャン・デュオの「La Essenza(ラ・エッセンツァ)」が出演し、オリジナルの賛美歌などを披露。オペラ歌手として本場イタリアで活躍した歌声を響かせた。
閉会のあいさつに立った実行委員長の瀬戸健一郎氏は、「このコロナ禍において、今日お集まりのどの方が欠けても祈祷会は成り立ちませんでした」と感謝を伝えた。「あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、あなたがたを任命したのです」(ヨハネ15:16)とのイエスの言葉を引用し、「今日皆さんがここに来ることを選択してくださったことは明らかではありますけれど、今日ここに集めてくださったのは主であったということを気付かされました」と証しし、すべての栄光を主に帰した。
次回の第21回日本CBMC国家朝餐祈祷会は、2021年11月17〜19日に日本CBMCが韓国CBMC、華人CBMCと共催して日本で開くCBMCアジア・パシフィックコンベンションと合わせて開催される予定。